台湾大学体育館で2022年6月12日、ボディービルコンテスト「夢想盃 Dream Cup」が開催された。台湾で活動する日本人タレント夢多(大谷主水)ボディービルコンテスト日本人で、台湾で初めてボディービルコンテストを主催したToPeak Entertainment代表の工藤栄一さんに編集長の秋山がインタビューを行った。
秋山:まずは工藤さんについてお聞かせください。
工藤:2012年6月に健康食品の事業を台湾で始めました。最初は1年だけ台湾に住み、その後インドネシアへ行こうとしていたのですが、縁がありそこから約10年間、台湾で飲食店経営など、さまざまな事業に取り組んでいます。元々社会貢献支援事業に携わっていたこともあり、台湾をはじめ、アジアのフィットネス文化の拡大を目的に今回の大会を開きました。
「夢想盃 Dream Cup」当日の工藤さん、夢多さん
秋山:その大会開催のきっかけとなる出会いを、まさか私が提供するとは当時は思っていませんでした。
工藤:元々スポーツは好きで、18歳の時にプロレス好きが高じて大阪でボディービルのジムに通っていました。2014年に台北で居酒屋「時時炉端焼きjiji」をオープンする際には「飲食店を経営するなら体形もかっこいい方がいい」と思い、トレーナーと出会いマンツーマンでのトレーニングを始め、筋トレを継続して行っていました。2021年1月、秋山さんが架け橋となり、フィジーク選手をしていたタレントの主水さんと初めて会った日に「大会出る?」と聞かれ、「うん、出る」と答えたこの0.数秒で人生が変わりました。返答した瞬間からワクワクし、運命が今から変わると感じていました。主水さんと話していくうちに、「コンテストに出よう」から「自分たちで大会をやりたい」となったのですが、この時点で6月12日のDream Cupの様子が想像できていました。そこからは、行動して答え合わせをするのみです。
「夢想盃 Dream Cup」会場@台湾大学体育館 普段はコンサートなどが開催される大規模な会場
秋山:あの時の工藤さんと主水さんの会話をすぐそばで見ていましたが、何か大きな出来事が起こりそうな予感というか、工藤さんから火花のような情熱的な熱量が感じられました。そこから、どんどん工藤さんの体が作られていく様子がすさまじかったことを覚えています。
工藤:ボディーメークを始め、その年の10月に初めて台湾でフィジーク大会に出場しました。Dream Cupの準備はその大会の頃、開催の8カ月前に始めました。まずはスポンサー集めから。当初、600万元出すと言ってくれた大きなスポンサー候補もいたのですが、その代わりにこの大会を仕切りたいという条件になってきたので、結果的に私たちの概念と合致せず、仕切られるわけにはいかなかったので破断となりました。が、この件がきっかけとなり「仲間同士の信頼」がより深くなったと思います。個人的な思いとしては、苦労しながら一から企画、資金集めなどをすることが大切なので、ここで絆が強くなったことが成功のきっかけになったと思っています。最終的に36社のスポンサー、協賛者がつきました。2人の日本人が台湾で一番大きな大会を作ろうとして、こんなにも多くの企業の賛同を得ることができ、大変感謝しています。
「夢想盃 Dream Cup」当日は多くのメディアが取材に駆けつけ、テレビやネットニュースで報道された。
秋山:本当にすごい大会でしたね。私は防疫隔離中だったので実際に会場に行くことができず、非常に残念でしたが、取材で現場にいた部下からもすごい熱量で報告を受けました。感動しすぎて自分も挑戦してみたくなったと話していたので、多くの人に影響を与えたのではないでしょうか。
工藤:それこそが私がこの大会を開きたい理由の一つです。自分自身がフィットネス、筋トレが好きなので、運動を習慣にしている人を増やしたいと思っています。運動を習慣にしている人は心も体も豊かな人が多いと思いますし、老若男女問わず運動は大切な生活習慣です。せっかく鍛えるのであれば、それを披露する場が必要ですが、自分たちがいいと思うものを自分たちで作りたいという思いから、大会を開催しています。台湾の選手の多くは海外の大会に出場していますが、台湾国内にもものすごく楽しい、また出たいと思えるステージを作りたいのです。私たちは基本的に収益を目的とせず、将来的な目標として、アジア最大級のイベントを目指しています。ボディービルの大会に集中するつもりはなく、「エンタメ&フィットネス 強さと楽しさ」をテーマに、さまざまな国の選手にもこれをきっかけに台湾に来てもらいたいです。来年には新人戦を開催する予定ですが、フィットネスの底上げを目的とし、これをきっかけにフィットネス人口が増え、各国企業の台湾進出のきっかけにもなればいいなと思っています。
日本を含む台湾国内外の企業から協賛を得て、大規模会場が満員に。
秋山:フィットネスは自分との戦いですから、達成感もより一層ありますし。聞いているだけでワクワクするようなプロジェクトですね。
工藤:大会当日、ステージ裏で震えている人や天井に向かって拝んでいる人など、いろいろな選手の姿がありました。Dream Cupを一つ目のゴールとして夢をかなえ、その次の夢につないでいければ最高です。審判は外部のチームで、公正に判定が行われましたが、トレーニング仲間の一人がクラシック部門で優勝しました。涙を流しながら優勝を喜ぶ姿を見て、本当にうれしかったです。他にも、これまで外国の大会に出場したいけれど資金的な負担が大きくチャレンジできなかった選手がDream Cupで手にした賞金で海外の大会に挑戦できるようになった話などを聞くと、開催して良かったと心から感じます。また、私が出場する姿を見て新人戦にチャレンジしたいという声も数人から上がっています。ボディービルやフィジークに挑戦することにより考え方は変わり生活や仕事、食事などいろいろなことをマネジメントして変えていかなければなりません。50代からでも挑戦できることはたくさんあります。この大会を通して、いろいろな人にいろいろな挑戦をしてほしいと思っています。
秋山:とても仲の良いお二人が、ふとしたきっかけで出会い、そして台湾で大きなイベントに成功して、私も大変刺激を受けました。今後の台湾のフィットネス業界に2人がどのように関わり、変化を遂げていくのか、大変注目しています。