現在台湾でバラエティー番組やユーチューブ、インスタグラム、モデル業など幅広く活動している河村一樹さん。最近ではUNIQLO台湾のCM起用、新リアリティー番組「開店Bar 夥伴」や映画「日本統一」への出演など多方面で活躍している。編集長の秋山が代表を務める台湾法人のSNS「Cakehashi_ig」のリール動画の制作も行うなど、秋山と公私ともに交流のある一樹さんに、台湾での芸能活動や俳優を目指すきっかけなどをインタビューした。
秋山:日本の読者の皆さんに自己紹介をお願いします。
一樹:河村一樹です。愛知県名古屋市出身、1991年生まれの32歳です。台湾には5年住んでいます。名古屋でモデル活動を始め、その後東京に移って芸能活動をしていました。役者になりたいと思って台湾に移住し、中国語をマスターして、現在台湾をベースに芸能活動を行っています。
秋山:役者を目指し台湾に来たということですが、なぜ台湾を選んだのですか?
一樹:日本に住んでいたころ、自分には武器がないと思い悩んでいました。ダンスや歌もできず、英語もしゃべれなかったんです。そこから言語を勉強したいと思い、中国語を勉強しようと思っていたときに、日本で台湾人の友達ができました。その友達が台湾の事務所を紹介してくれて、そのまま契約して台湾に来ました。住んでみるととてもいい所で、台湾が好きになって今も台湾で活動しています。
秋山:なるほど。新しいスキルを身につけることも踏まえて、台湾という新たなステージで、新しい自分でチャレンジしてみたかった、ということですね。
秋山:一樹さんは現在、「同学来了」「娯楽百分百」など多くの台湾のバラエティー番組に出演しています。番組出演の際、楽しいと思う瞬間、達成感を感じる瞬間などはありますか?
一樹:中国語で達成感を得られる部分が一番大きいですね。最初のころは緊張して、思うようにエピソードを話せないこともありました。最近は自分の明るいところなど、個性も出せるようになりました。初期のころから自分を起用してくれていた制作の人が、自分が他の番組に出ているところを見て「この前の番組見たよ。すごく良かったよ!」などと言ってくれたことがあって、すごくうれしかったです。
秋山:逆に、台湾での芸能活動をする中で、日本とは違う、台湾ならではの大変なところはありますか?
一樹:やはり中国語が一番難しいですね。中国語が全く話せない状態で台湾に来て、そこから少しずつ勉強して、少しずつ番組でもうまくしゃべれるようになっていきました。他には、台湾語であったり、台湾人なら昔から聞いたことのある曲、誰でも知っているネタなどについていけないときですね。どうしても僕たちは台湾で生まれ育ったわけではないので、そういったものは知らないことが多い…。時がたつにつれて覚えていく、知っていくものだとは思いますが、ついていけない時は、やっぱり難しさや悔しさを感じますね。
一樹:あとは台湾に来たばかりの時は中国語も英語も分からず、オーディションも大変でした。今でも記憶に残っているオーディションが一つあって、結構細かい説明の多い現場だったのですが、最初中国語で説明されても分からず、2回目に英語で説明されても分からず。最終的にモデルの人が片言の日本語で説明してくれたのですが、そんな状態では当然オーディションにも落ちちゃって。悔しくて泣きながら帰ったことがあります(笑)。
秋山:なるほど。現場ではスピード感もあるし、2度は聞けないこともありますね。そうした悔しい経験もしてきたからこそ、今の一樹さんがあるというわけですね。
秋山:現在、一樹さんは台湾での芸能活動と並行してユーチューブやインスタグラムでの活動もしていらっしゃいます。最近ではリール動画などもバズったりしていますよね。弊社のインスタグラムやTikTokの動画がバズったのも、一樹さんのアイデアがあってこそです。SNS上での活動を始めるきっかけは何だったんですか?
一樹:実はユーチューブやインスタグラムなど、特別やりたいわけではないんです。やっぱり一番は役者になりたくて。そのために、今は知名度を上げることと中国語のスキルを上げることが大事だと思っています。元から自分に知名度があれば、SNSは今ほど力を入れていなかったと思います。だけど今知名度を上げるにはユーチューブ、インスタグラムがポイントだと思い、どちらにも載せられるショート動画に力を入れるようになりました。
秋山:なるほど。今、一樹さんは主に台湾人に向けてのコンテンツを作っているので、日本人に向けて発信する場合とは少し違う部分もあると思います。動画作成の際に気をつけているポイントはありますか?
一樹:「台湾の人が見たいもの」を意識して作っています。もちろん日本の方にも知ってもらいたいですが、まず台湾で成功したいと思っています。だから今は台湾の人に興味を持って見てもらえるような動画を作っています。ユーチューブの動画やショートを作っていく中で、だんだんと何が台湾人に受けるのかが分かってきました。例えば、僕たち外国人が台湾で何かする、初めての台湾料理を食べる、などと言ったものは反響がいいです。今はそこからどんどん派生して動画を撮っています。
秋山:インターネット上での活動はそういった反響やどういったものが受けるのかなどはリアルに再生回数やコメントで返ってきますからね。台湾で何が受けるのか把握するということは、俳優業をするに当たっても有益な情報になりますね。
秋山:一樹さんが今出演している新リアリティー番組「開店Bar 夥伴(パートナー)」についてお聞きします。10人のインフルエンサーがバーを開くという、台湾の新感覚リアリティー番組ということですが、意気込みやオファーに至るまでの経緯を教えてください。
一樹:最初は事務所に連絡があり、そこからオーディションに行く、という流れでした。どうやって僕を知ったんですかと聞いたら、制作の人がショート動画を見て、プッシュしてくれたみたいです。出演しているメンバーが、思いの外、すごいメンバーばかりなんです。このメンバーの中で自分は知名度は高い方ではないので、起用してもらえて本当にうれしいです。番組出演者の総フォロワー数が850万人以上なので、人目に付く機会も増えると思いますし、チャンスだと思うので頑張っていきたいです。
秋山:リアリティー番組は日本でもブームになっていますよね。言える範囲でいいので、撮影の裏話などはありますか?
一樹:新しくバーを開くという番組だけあって、出演しているメンバーはみんなお酒が好きなんですよ。撮影後にみんなで飲みに行くこともあります。僕自身もお酒は好きなので、溶け込みやすかったです。
秋山:なるほど。5対5のチームに分かれて、それぞれがバーを開くという企画ですよね。お酒がテーマとなっていて、恋愛やけんかなどよりナチュラルな人間模様が見られそうです。
秋山:先ほど、「開店Bar 夥伴」出演のきっかけもショート動画だったとおっしゃっていました。最初に知り合った時は、一樹さんのフォロワーは2万人くらいだったと思います。現在一樹さんのインスタのフォロワー数は10万人以上。5倍の伸びはすごいです。相当努力されたと思います。弊社のインスタはフォロワー数3.7万くらいで、1回目の天井に当たっているんですよね。
一樹:僕も10万人手前でいったんフォロワー数の伸びが止まりました。そこで150万回、200万回再生のリール動画がポンポンと出て、また伸びたという感じです。他の人も動画を出しているので伸びにくいということもありますが、継続して動画を出していくことが大事だと思います。カケハシさんのリール動画制作もやらせていただいていて、そこで動画がバズって僕の方に流れてきたフォロワーもたくさんいると思うので、すごくありがたいです。
秋山:リール動画の効果はすごいですよね。こんなにフォロワー増えるの? と思います。10万人で一回天井に当たったということですが、それは台湾で日本が好きな層にはいったん全部リーチしてしまっていて、今後もっと伸ばしていくためには、新しい層へのリーチが必要になってくるかも知れませんね。今後も弊社のリール動画をよろしくお願いします(笑)。
秋山:台湾で芸能活動をしていて、日本との違いを感じることはありますか?
一樹:台湾では事務所の強い弱いがあまりなく、平等にチャンスが与えられる点が良い点だと思います。僕は現在台湾でUNIQLOのCMに出演させていただいていますが、日本で大手のCMに出るとなると、大手事務所に所属していないと、オーディションにさえ行けないんです。ですが台湾ではオーディションに普通に参加できて、選考を経て枠を勝ち取ることができました。所属事務所にかかわらず、対等に見てもらえて大手の仕事もできる、というのはすごくうれしいですね。
一樹:最近はいろいろな仕事がショート動画から来るようになりました。僕の動画は日本をテーマにしているので、一般の方だけでなく有名な俳優さんや制作の方であっても、平等に見てくれるんですよね。日本への旅行を計画している人や、日本に興味のある人は見てくれます。日本人の演者を探そう、となった時に「あ、あいつがいたな」と思い出してもらえ、番組やドラマの話などもショート動画を見て声をかけてもらえることが多くなってますね。
秋山:UNIQLOとはすごいですね。台湾のタクシーや地下鉄駅構内などでも一樹さんの出ているCMが流れていますよ。それにしても一樹さんとUNIQLOってすごく合いますね。真っ白なキャンバスのようなイメージです。
一樹:ありがとうございます。実は昔からよくそれ言われるんです(笑)。
秋山:以前弊社の案件で、一樹さんに日本のアパレルのUrban Researchの動画企画にご協力いただきましたね。その節はありがとうございました。
一樹:ありがとうございました。アパレルの仕事はずっとやりたいと思っていたんですがUrban Researchの動画をきっかけにアパレル関係の依頼がどんどん来るようになりました。
秋山:UNIQLOのモデルやさまざまなテレビ番組の出演、インスタのフォロワー数も10万人を超えるなど、今年は一樹さんにとって飛躍の年なのではないですか?
一樹:感触はありますね。実は昔からずっと占いの先生などからも「今年の夏が来る」と言われているんです。「開店Bar」への出演で今後露出も増えていくと思うので、まずは番組の成功を目標に頑張っていきたいですね。
秋山:一樹さんと最初に会った時と比べて、別人というか、オーラや面構えが全然違う。これからの活躍がすごく楽しみです。
秋山:普段仕事をする上で、大切にしていることはありますか?
一樹:少しでも暇な時間があると、フォロワーを一人でも増やすために何ができるかを自然と考えるようになりました。例えば一日オフの日ができたとしても、動画を1本撮って、編集してその日のうちにアップします。まだ時間が余っていればTikTokでライブ配信をしよう、とか考えますね。あまり休むっていう概念がないんですけど、自分のやりたいことだし、もっと多くの人に僕のことを知ってもらいたいので。
秋山:ストイックですね。苦にはならないですか?
一樹:全然苦じゃないですね。昔はパソコンを触るのも苦手で、ユーチューブの編集なども一から勉強しました。今も正直なところ編集は大嫌いなんですけど、この動画一本回れば伸びる、と信じてやっていたので、そのためだったら嫌なことも苦じゃないですね。
秋山:影響を受けた俳優などはいますか?
一樹:一番好きな俳優は阿部寛さんです。芝居の作り方が自分の目指すものと同じような気がしていて。役者ってまるまる別人になる人と、自分の過去を少しずつさかのぼって役作りをする人と2つのタイプがいると思っています。自分も阿部寛さんも後者のタイプだと思います。
例えば今回出演する「日本統一」という映画で僕は刑事役なんですが、刑事ということは警察学校に行って、警察官として働いて、という感じですよね。僕の役作りの仕方としては、自分の過去をさかのぼって、高校卒業後、役者の道に進まずに刑事になる選択をしていたらどうなっていたのか、刑事の道に進むきっかけは何だったのかを考えます。自分の過去をさかのぼって、刑事になる世界線をたどっていく感じです。
秋山:なるほど。すごく時間のかかる役作りだと思いますが、自分の過去をさかのぼって、自分の中にしっかりとストーリーを入れ込んでいくというわけですね。役作りもストイックな一樹さんですが、俳優を志すきっかけは何だったんでしょうか?
一樹:最初は、幼稚園のころに見たロング・バケーションで、「キムタクかっけぇ!」って思ったのがきっかけです(笑)。それからずっとテレビに出たい、と思ってたんですが、全然自分に自信がなかったんです。転機だったのは高校卒業の時、普段全く褒めない友達が、「俺の周りにもモデルとかいるんだけど、一樹の方が断然かっこいいよ」と言ってくれたことです。そこから名古屋の一番大きな事務所に応募してみたら受かって、そこから始まったって感じです。
秋山:ロンバケは僕も人生のターニングポイントになるほど衝撃を受けたドラマです。今でもサウンドトラックを聴いたりします。
秋山:これから台湾での活動と並行して、日本での活動の予定などはありますか?
一樹:今回出演する「日本統一 台湾編」は日本の映画です。僕の一番の目標は役者なので、それにつながる仕事があれば日本・台湾にかかわらず活動していくつもりです。台湾に住みながらも、日本に行って活動する機会が今後増えていけば、僕としてもありがたいです。
秋山:最後に、読者の皆さまに一言お願いします。
一樹:映画「日本統一」とリアリティー番組「開店Bar 夥伴(パートナー)」をぜひ見ていただきたいです。「日本統一」で僕は台湾人の役で中国語をしゃべっているのですが、「え、あの役は日本人がやってるの!?」と思っていただければ(笑)。
秋山:一樹さんのユーチューブやインスタグラムも面白い動画がたくさんあるので、ぜひ見てほしいですね。今後のさらなる活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。