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インタビュー:10年以上前からインバウンドに注力、ビックカメラ営業統括部部長・堀越雄さん

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 日本で家電量販店といえば多くの人が思い浮かべるであろう「ビックカメラ」。かつてない円安によりインバウンド市場が活況を迎える今、10年以上前から始めた海外向けマーケティングが実を結び、ビックカメラ店内ではショッピングを楽しむ海外客の姿が当たり前の風景となった。ビックカメラ宣伝部門で早期から台湾インバウンド市場に注目し奔走した堀越雄さん(現・営業統括部部長)に、編集長の秋山が話を聞いた。

秋山:台湾人にも大変人気のビックカメラですが、堀越さんの仕事についてお聞かせください。

堀越:ビックカメラの広告宣伝を担当しています。海外のお客さまに日本へ、ビックカメラにお越しいただきたい思いをミッションに掲げて取り組んでいます。台湾は主要マーケットの一つで、台湾のお客さまにご来店いただくためにさまざまな取り組みを行ってきました。もちろん日本のお客さまにもより多くお越しいただけるように取り組んでいます。ビックファンを増やすための最近の事例としては、ビックカメラ創業の地、池袋駅の山手線発車メロディーをビックカメラのテーマソングにしてもらいました。よりお客さまにビックカメラに親しみを持っていただけたらとの思いです。

堀越:実は一昨年に定年を迎え、広告宣伝やインバウンドの責任者は若い世代にバトンタッチし、今はサポート、相談相手として働いています。

秋山:インバウンド業界にはビックカメラに入る前から関わっていたのですか?

堀越:ビックカメラで働きもう35年になります。最初はカメラ売り場に配属されました。何店舗かの副店長、店長を務めた後、仕入れ部門の責任者、Eコマース部門の責任者なども経て、広告宣伝の責任者を延べ15年ほど務め、一番長く携わっていました。当初は日本人のみを意識して取り組んでいましたが、海外からのお客さまが少しずつですが増えてきたため、2010年ごろよりインバウンドにも力を入れ始めました。

秋山:堀越さんの現在の一日の業務フローについてお聞かせください。

堀越:出勤したらまず情報収集を行います。日経新聞ウェブ版などをみたり、「販促」「提携」「インバウンド」というキーワードで情報を検索して。特に今は「インバウンド」に関わる情報が非常に多く、インバウンド業界全般、国・自治体、旅行関係、他関連企業の情報を確認しています。その後はさまざまなミーティングに出席しています。社内以外にも、国内外の取引先やインバウンド業界の企業とも商談を行っています。これらの業務が一日の7~8割を占めてます。

秋山:ビックカメラと自治体で提携したりするのですか?

堀越:当社は民間企業のため、ダイレクトに取り組むことは難しいですが、各自治体が観光客を誘致するに当たって、自然、街並みや食などといったコンテンツ以外にも、ショッピングも一つの魅力として情報発信時に、その地域にあるビックカメラ店舗を加えてもらえるようお願いしています。「具体的な企業名を加えることはNG」と断られることがほとんどですが、それら地域での自治体の取り組みを、またどの国からの観光客が増えているといった情報も得られ参考になるため時間が許す限り情報交換の場も設けるようにしています。

秋山:訪日外国人観光客は10年前から増えていますが、その中で台湾市場には昔から注力していたのですか?

堀越:まず海外からのお客さまが増えていることに気付いたのは2010年ごろからでした。特に中国や台湾からのお客さまにカメラや炊飯器を購入いただき始めました。そこでインバウンドの取り組みに力を入れるべきではと考え始め、中国や台湾に詳しい人との接点をまずは増やしました。初めて訪台したのは2013年だったと記憶します。最初は旅行・金融関係(訪日時の決済手段として)の企業を訪問し、何か取り組みができないかと相談して回りました。

秋山:今でこそ台湾人に人気となっているビッグカメラですが、その秘訣(ひけつ)を教えてください。

堀越:当初、台湾の旅行会社や決済会社を訪問した際に、ビックカメラは電気製品を扱っている店だと知っている人が約3割、他は全く知られていなかったり、大きなカメラ屋だと思われたりで、来てくださったことのある人はほんの一部でした。こんな状況では台湾のお客さまに来店いただけないないため、接点のある企業にビックカメラの店舗の場所、品ぞろえを紹介するところからスタートし、地道にコツコツと知名度向上に努めてきました。

堀越:ビックカメラの祖業はカメラ販売ですが、今は美顔器、ワイヤレスイヤホンや腕時計のほか、化粧品、お菓子、お酒、薬、眼鏡・コンタクトレンズ、ゴルフ用品も取り扱っていますと一社一社回って伝えて参りました。特に海外ではパソコン店はパソコンだけ、カメラ店はカメラだけ、時計店は時計のみしか取り扱っていないなど、商品販売は一つのカテゴリーのみを販売していることが普通ですが、ビックカメラでは全てが1カ所でそろうことが魅力と繰り返し案内してきました。店舗が主要駅のすぐそばにあってアクセスが良いことや、もちろん免税対応もできることを説明した上で、日本への旅行のツアーに組み込んでもらったり、情報発信に加えてもらったりするよう何度も営業して回りました。取引先の担当者が変わる度に営業に行きました。コロナ禍前まで続けました。地道な積み重ねが実って今につながったと思います。

秋山:確かに十数年前の台湾には家電量販店はなかったため、台湾人にとってもビックカメラのような店は非常に便利に感じられたと思います。

堀越:今は台湾以外の一部国々で同様の営業を続けています。「ビックカメラは何屋さんですか?」という10年前に台湾で頂いた質問をまた頂き、同じことをご案内をしています(笑)。

秋山:台湾と他国の共通点または違いを感じたことはありますか?

堀越:共通点は皆さん日本にすごく興味を持っていただき、ぜひ日本に行きたいと言ってくださることです。

堀越:一方で興味のあるカテゴリーは違っていて、台湾の皆さまであれば美顔器、ドライヤー、シェーバーが人気です。東南アジアではセイコーやカシオなどの国産腕時計が人気です。自国で買うよりお得で、さらに今は円安の後押しもあり、かつ免税で安く買えるということで喜んでいただいています。韓国のお客さまにはお酒、特にウイスキーが人気で、韓国の皆さまの免税売り上げの半分以上がウイスキーです。海外製のウイスキーも日本で購入すると安くなるようで、たくさん購入いただいています。

堀越:実は外国人だけでなく、海外に2年以上住んでいる日本人も「一時帰国免税」という制度の適用対象です。海外に長く住んでいる日本人は、例えば、現地で日本語のキーボードが手に入りにくいことから、日本に帰国した際にビックカメラでパソコンを購入していただける事が多いです。他にもビジネスマンはシェーバーだとか、家族に頼まれて美顔器やドライヤー、お子さまのためにプラレールなどのおもちゃも購入していただいています。

堀越:羽田空港と成田空港にも店舗があります。ネットから商品を選んで、日本を出国するまで取り置きするサービスが利用できます。台湾人のお客さまには、入国時に空港内店舗で商品を注文しておいて、出国時に商品を免税にてピックアップするという方もいます。

秋山:逆にインバウンド市場を強化していく中で一番大変だったことは何ですか?

堀越:台湾は日本と比べて暑いことが多かった事ですかね。一社一社営業して回る中で、歩いて移動することも多かったため、汗が滝のように流れて大変だった事がありました。初めて訪問する相手先となるとやはりスーツを着て伺いましたので…。

秋山:円安の影響もあり訪日インバウンド市場的には追い風が来ていますが、中長期的に見て、インバウンド市場の盛り上がりをどう見据えていますか?

堀越:今は東アジアや東南アジアからのお客さまが増えていますが、過去少なかった欧米のお客さまも円安のおかげで増えています。家電製品は自国で買うよりも日本に来てビックカメラで買った方が安いケースが多くあるようです。多少円が反発しても円安基調は今後も続くと考えます。伴い引き続き円安の恩恵を受け今後も多くの海外のお客さまに来てくださると考えています。

堀越:政府の施策に、インバウンドのお客さまを主要都市から地方都市に誘導したいという流れがあります。北海道、東北、信州、北陸、四国、九州などまだまだ海外の人に知られていない、でも日本の魅力あふれる地がたくさんあります。日本へお越しいただくチャンスがまだまだあり、、インバウンド市場には伸びしろがあると考えます。

秋山:円安の影響で客の消費行動に変化は表れていますか?

堀越:現地通貨で見ると、個人のお小遣い(当社での買い物額)は大きく変わってないかと思います。台湾のお客さまの消費額は1万台湾ドル弱で今も昔も変わらないと感じますが、円安の影響で、結果として購入金額が上がっています。今までより上位機種の購入や、「ついで買い」も増えています。

秋山:インバウンド集客を狙う対象国として台湾のほかに他国はありますか? どの店舗に力を入れていますか?

堀越:最優先の国はやはりリピーター率の高い台湾のほか、訪日者数が回復傾向にある中国です。インバウンドに注力し続けていく店舗として言えば、免税売上額上位の有楽町店、新宿西口・東口店、秋葉原、あと東アジア諸国から早く、安く来られるなんば店でしょうか。

秋山:インバウンド集客を目的とした時に、日本企業にとって大事なことは何だと思いますか?

堀越:インバウンドに注力し始めた時から各店舗にお願いしているのですが、やはり来店してくださった目の前のお客さまに喜んでいただけるよう、一生懸命ベストを尽くすこと、その積み重ねと考えます。予算をかけてプロモーションを行っても、お客さまに喜んでいただける受け入れ体制が整っていないと、がっかりされてしまいます。満足、感動してもらえると、良い評判を、特に今は口コミで拡散していただけます。結果、それが最大の宣伝になると考えます。

秋山:長年ビックカメラで働かれて、いくつもの店舗の店長経験もある堀越さんだからこそ、今の言葉は非常に染みました。ありがとうございました。

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