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インタビュー:ジーン・カオさん 映画「娼生」の主役、日本で5月公開

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 映画「娼生(しょうふ)」(中国語原題「鳳姐」)は、台湾でかつて児童買春や人身売買が当たり前として横行していた時代に、歌手になる夢を諦め娼婦として生きた主人公「フォン」の人生を描いた人間ドラマ。同作品は2024年12月に台湾で公開され、1カ月で興行収入NTD500万元を突破し、2024年の台湾邦画上位20位にもランクインした。日本でも5月23日に公開を控える中、主役を演じた俳優の高宇蓁(ジーン・カオ)さんに、インタビューを行った。

——この映画は事実を基に製作されたということでした。フォン役を演じるに当たり、どう役作りをしていきましたか?参考にした作品などはありましたか?

ジーン・カオ:フォンという人物は、実在する多くの女性たちの物語を重ね合わせて生まれたキャラクターです。役作りのために、日本統治時代から戦後にかけての台湾の性産業に関する書籍を読み、性労働者の権利団体が集めたインタビュー資料にも目を通しました。また、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の「悲情城市」を改めて見て、社会の周縁に生きる方々が抑圧された感情をどのように表現していたかを学びました。


 
——警察役である弟のユーミンや、同郷で同じ境遇にあった少女シュエンの登場は、ストーリー上、大きな転機となりました。彼らの登場によるフォンの心境をどう解釈し、演技へと昇華させましたか?

ジーン・カオ:フォンの弟ユーミンと、故郷から来た同じ境遇の少女シュエンの登場によって、フォンはずっと避けてきたものと向き合わざるを得なくなります。それは、故郷と過去です。ユーミンはフォンにとって最も深い傷であり、罪悪感を抱いていますが、それでも家族の理解を切実に求めています。シュエンは、若かりし頃のフォンを映し出す存在で、彼女は次第に心を閉ざすのではなく、守りたいと思うようになります。

ジーン・カオ:俳優として、私はそのような場面で泣かない選択をしました。その代わりに、フォンの目に感情を込めました。彼女は自分の脆弱(ぜいじゃく)さを隠す人物ですが、それでも観客は彼女の内面に渦巻く感情の波を感じ取ることができるのです。

——フォンは当初、歌手になる夢を持って日本へ渡ったという設定もあり、映画冒頭ではジーンさんが日本語のせりふを話す場面がありました。短いシーンでしたが、日本語の発音や日本人客に対するマナーなどを細かく研究しているように感じました。このシーンについて印象に残っていることや、どのように稽古したかを教えてください。

ジーン・カオ:冒頭の日本語のせりふは短いものでしたが、私はとても丁寧に準備しました。監督は「ネーティブではないけれど、正確に聞こえる日本語にしたい」と考えていたので、私は日本人のコーチと一緒に、台湾人らしいアクセントの発音を練習しました。

ジーン・カオ:あのシーンは、ただのせりふではありませんでした。フォンが「自分も愛される価値がある」と自分自身に証明する瞬間だったのです。その思いに私自身、とても心を打たれました。

——ジーンさんのプライベートについて質問です。これまでに日本に行ったことがあれば、ジーンさんお気に入りの日本のスポットを教えてください。日本に対するイメージや、お気に入りのグルメなどを教えてください。

ジーン・カオ:日本にはこれまで何度も訪れています。特に箱根や軽井沢の風景が大好きで、あの場所に行くと心が落ち着きます。日本料理も大好きで、特に懐石料理や刺し身が好きですし、日本のお菓子も大好きです。日本文化にあるおもてなしの心や、細やかさにもとても感銘を受けています。訪れる度に、日本の皆さんのプロフェッショナリズムに心を打たれます。

——映画が日本で公開されるにあたり、日本の視聴者、また日本のファンに向けて伝えたいメッセージはありますか?

ジーン・カオ:台湾の社会や歴史に深く根ざした物語を、日本の皆さんが温かく受け入れてくださったことに、心から感謝しています。物語の中心には台湾の女性の運命がありますが、「葛藤」と「尊厳」というテーマは、国を超えて誰にでも通じるものだと思います。もしあなたが、かつて夢を抱いたことがあり、何かに苦しみ、誰かを愛したことがあるのなら、きっとフォンの中に、自分自身の一部を見つけられるはずです。

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