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インタビュー:台湾グルメ発信在台湾日本人インフルエンサー「たいわんめし」さん

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台湾グルメをインスタグラムやユーチューブなどで日本語で紹介する日本人インフルエンサーの「たいわんめし」さん。趣味で始めたSNSでの発信を約9年間続け、今では「台湾茶」のブランドも立ち上げるなど、多方面で注目を集めている。
今回、台北経済新聞編集長の秋山は、たいわんめしさんに台湾で活動を始めたきっかけやSNSでの発信に込める思い、そして今後の展開について話を聞いた。

秋山:たいわんめしさんが、台湾に来たきっかけは?

たいわんめし:以前勤めていた会社で2011年に台湾の駐在の話があり、2012年に駐在員として台湾に来ました。もともと海外には興味があったので、いいきっかけでした。

秋山:海外にはよく行っていたのですか?

たいわんめし:学生時代の頃から、バックパッカーとして海外にはよく行っていました。アジア、中東、ヨーロッパなどを旅していました。

秋山:たいわんめしさん、今おいくつですか?

たいわんめし:45歳です。

秋山:じゃあ、めちゃめちゃ「深夜特急」とかに影響を受けた本物のバックパッカー世代じゃないですか?

たいわんめし:そうですね。携帯やネットがそこまでない時代でしたので。宿も取らずに旅をしていました。歩く方向だけ決めて宿を探していました。

秋山:紙の情報だけを頼りに現地へ行って、宿で情報を集めながら旅をする。本当に旅が好きなんだなと感じます。そうした経験があるからこそ、「たいわんめし」というコンテンツも、ゼロからイチを生み出す土台になっているのかもしれませんね。実際に、どのぐらい旅をされたのですか?

たいわんめし:30か国ぐらい旅をしました。20代後半からは忙しくなってあまり行っていませんが、2週間くらい休みを取って海外に行っていました。

秋山:特にどの国が面白かったですか?

たいわんめし:全部楽しかったですね。特にインドとトルコは印象に残っています。
インドにもう一回行ってみたいです。最近行った方の動画を見てみると、ガンジス川周辺はあまり変わっていなかったです。


秋山:そうなんですね。当時はインターネットというものがなかったので、ドキドキ感やスリル感がまた変わりますよね。特に、アジアが好きなのですか?


たいわんめし:アジアの方が好きですね。ヨーロッパも周遊はしていたのですが、当時お金がなかったので、B&Bのベットに泊まって、食事はパンにチーズを挟んで食べていました。他は、現地の方と交流しながら旅をしていました。


秋山:SNSを始めたきっかけを教えてください。

たいわんめし:2016年ごろ、台湾でのランチやローカルご飯の記録用に始めました。最初は写真をインスタグラムに載せて紹介していただけですが、気がついたらフォロワーが徐々に増えていました。

秋山:当時から今のスタイルのように、自分の声を入れて、リール動画を投稿していたのですか?

たいわんめし:当時は、インスタグラムに写真だけで、一言、二言添える形で投稿していました。2年くらい前にインスタグラムのリール動画が始まり、ショート動画がトレンドになってきたときに動画を作り始めました。

秋山:コロナ禍で日本人が台湾に行けなくなったときに、フォロワーが増えたと感じましたか?

たいわんめし:そうですね。コロナ禍の時期に少しフォロワーが増えました。

秋山:もしかしたら台湾が好きな日本人に、台湾に行きたい気持ちが刺さったのかも知れませんね。コロナの時期はどのぐらいの頻度で投稿していましたか?

たいわんめし:毎日投稿していますね。写真と一言文章を載せるだけだったので、苦ではありませんでした。ここ1年ぐらいで本数を減らして投稿しています。


秋山:最初にインスタグラムに投稿をしたとき、どんな反応が印象に残っていますか? 印象に残っているコメントなどあれば教えてください。


たいわんめし:最初はコメントをあまり気にしていなかったのですが、2020年ごろからフォロワーが増え、「ここのお店行ってみたい」「面白い」といったコメントや保存が増えて、それがモチベーションになりました。特に多かったのが、「パクチー入ってますか?」「台湾の天気はどうですか?」 のような質問系のコメントです。さらに、アーティストの村上隆さんから連絡をいただき、一緒に食事をしたこともあります。他にもタレントさんと食事に行くこともあります。

秋山:そういった方たちとのコラボは、仕事としてコラボしたのですか?

たいわんめし:仕事としてはコラボしていません。自由に動画を撮りたいので、仕事は断っています。フラットな関係のままご飯に行った方が楽しいです。

秋山:メインの仕事による収入は変わっていないのですか?
たいわんめし:はい、変わっていません。PRの仕事を行いながら、お茶の事業にも取り組んでいます。

秋山:SNSを始めたばかりの頃に、「大変だったこと」や難しいと感じたことはありましたか?
たいわんめし:もともと趣味で始めたことなので、「大変だな」とはあまり感じませんでした。再生数などの数字も一応チェックしていますが、見すぎると疲れてしまうので、ほどほどに注意しながら見るようにしています。

秋山:そうなんですね。たいわんめしさんの動画は広告っぽくありませんよね。こうした点が安心感だったりしますよね。投稿を続けていく上で、視聴者の皆さんに受けるジャンルと受けないジャンルはありますか?

たいわんめし:台湾のローカルフードを紹介する投稿は視聴者には非常に人気ですね。台湾好きの方はローカルな食べ物が好きだと思います。それとは逆に、おしゃれなカフェなどの投稿はあまり受けない印象でした。

秋山:投稿コンセプトについて、日々SNSで発信を続けていく中で、自身が大切にしているテーマや軸などはありますか?

たいわんめし:基本的には「リラックス」をテーマにしています。自分自身もリラックスできて、見てくれる人にもリラックスしてもらえるような動画を発信することを心がけています。

秋山:動画は先に台本を書く派ですか? 映像を撮ってから、台本を作って動画を制作していますか?

たいわんめし:台本は書いていません。先に動画を撮って、編集して、文字、音声を感覚的に入れてから投稿しています。タイアップなどの案件を受けると台本を先に提出する必要があるので、少し困る時があります。

秋山:すごく効率的ですよね。きっと、その自然体な雰囲気が伝わっているから支持されているんだと思います。私は、たいわんめしさんのせりふで好きなものがあって、「こんな感じ」という言葉は最強のワードだと思っています。いちいち説明しなくても、「動画を見れば分かる」というスタンスがすごく好きなんですよね。

たいわんめし:ありがとうございます。昔から、撮った写真をすぐ投稿するスタイルなので、5分以内で終わらせるように意識していました。そのため、動画編集も15分程度で完了させています。

秋山:すごいですね。本当に効率的で素晴らしいです。声もマイクを付けずに制作していますか?


たいわんめし:そうですね。ベッドに横たわりながらカジュアルなスタイルで音声を入れています。本当は駄目ですけど…。

秋山:いやいや、時間効率がすごく大事ですので。今のSNSで言われてますが、動画の質が良くても、動画の数を出さないとバズりにくいので、数を出すという面では非常にすごいと思います。

秋山:SNSを仕事として継続していく上で、モチベーションの保ち方や情報の向き合い方など、意識している点はありますか?

たいわんめし:SNS投稿は「投稿しなきゃ」というプレッシャーは感じておらず、やりたい時にやるスタイルなので継続できています。現在は週に3~4本投稿しており、動画編集は15分ほどで終わりますが、店に食べに行くのに1時間ほどかかります。

秋山:それにしても、1本15分であのハイクオリティーな動画を作る人は、これまで見たことがありません。本当にすごいと思います。ところで、動画制作は慣れてきた感じですか? 撮るべきポイントのコツがつかめてきたのでしょうか?

たいわんめし:カットも決まったパターンで制作していますし、コメントも「こんな感じ」といった簡単なせりふを入れているので、全然大変ではありません。細かい情報を詰め込みすぎると大変に感じることもあると思います。


秋山:なるほど。ちなみに、たいわんめしさんが日本に帰国した時には日本のコンテンツも投稿していますよね。台湾のコンテンツと比べて、視聴者の反応に違いはありますか?

たいわんめし:日本の投稿はエンゲージメントが下がりがちですね。新潟に行くと「新潟出身なんですか?」とか、有名な店を紹介したときは、「そこ知っていますよ」みたいなコメントや反応をもらうことがあります。この前も、新潟へ米作りに行っていました。本当は台湾の人たちにも、この米を食べてもらいたいと思っています。

秋山:都内とかではなく、割とローカルな場所に行った方が反応がいいんですね。最近は農家の方もSNSを使って盛り上げているので、そうした面では人気が出るだろうと思います。台湾人のファンも結構いらっしゃるのですか?

たいわんめし:台湾のファンも結構多くて、35%ぐらいが台湾人のファンがいますね。台湾人のファンの方も、台湾グルメに興味がある方が多いですね。


秋山:そういった方々は中国語でコメントするのですか?


たいわんめし:中国語のDMはたまに届きますが、コメントのほとんどは日本語です。
ただ、「ルーローハン5選」のように、台湾の方が討論しやすい内容になると、中国語のコメントも増えますね。また、村上隆さんとのコラボ動画をきっかけに、台湾のフォロワーさんも増えました。

秋山:35%が台湾人のフォロワーというのはすごいですね。村上さんとのコラボ動画も、何と300万回再生されています。本当にすごい。

秋山:今後の展望についてお聞かせください。

たいわんめし:今は台湾グルメがメインですけど、日本も含め、日本と台湾の食文化をつなげるようなコンテンツに挑戦していきたいですね。例えば、台湾茶のブランド「香日子」を昨年3月に立ち上げました。台湾の方、日本の方はもちろん、海外の方に広めていくようにしていきたいと考えています。


秋山:台湾茶を日本に広める活動を本格的にされている方を、これまであまり見てきませんでした。通販などで扱っている方はいますが、たいわんめしさんが本格的に活動されている印象です。この分野に日本人があまり手をつけなかったのは、何か難しい部分があるのでしょうか?

たいわんめし:そうですね。まず、台湾に住んでいないと難しいと思います。あと、言語的にお茶の農家に直接行って話をすることはハードルが高いと思います。実際に台東や南投などの農家の地域に連絡して、実際行って、農家とのコミュニケーションを取らないとハードルが高いです。この点ができたとしても、情報発信ができないと誰にも知られないので、この両軸を意識して続けています。

秋山:ちゃんと農家さんと話をして、お茶のブランドを立ち上げてやられているのが楽しみですね。期待しています。

たいわんめし:台湾はたくさんのお茶の種類があるので、いろいろな飲み方とか台湾の文化を、たいわんめしというコンテンツを使って広めて行きたいです。

秋山:なるほど。最後の質問になります。
今の活動に加え、「やってみたいこと」や「広げていきたい分野」などはありますか?

たいわんめし:SNSとお茶の活動を掛け合わせて、店をやってみたいです。

秋山:その店は、台湾のいいものを日本に届け、日本の方に食べていただきたいという思いが込められていますか?

たいわんめし:最初は、日本から来る観光客に店に来てもらいたいと考えていました。でも、日本からの観光客は月に10万人~15万人くらいなので、それだけでは厳しいかなと。だから、台湾の方にも来てもらえる店にしたいです。店を作ったら、旅人や台湾の人たちが気軽に話せるような場所にしたいですね。いろいろな人に来てもらえるような店を目指しています。あと、台湾ではコーヒーが人気ですし、お茶屋さんでは台湾茶を使った蜂蜜なども見かけます。そうした台湾ならではの要素を取り入れながら、いろいろな魅力が詰まった店にしていきたいと思っています。

秋山:面白いですね。台湾茶のこだわりの部分とか特徴とか、いい商品だけど、あまり発信されていない印象を感じるので、ぜひSNSを使って広めてください。私も期待しています。

たいわんめし:はい、ありがとうございます。

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