「身長は高いけどカッコよくない、こんな僕でもアイドルになれますか?」をメインタイトルにユーチューブを始め、台湾と日本の文化の違いや台湾での生活を中心に動画を公開しているユーチューバーの三原慧悟さん。ユーチューブのチャンネル登録者数は137万人と、在台湾日本人ユーチューバーの中でもトップのフォロワー数を誇る三原さんに、台北経済新聞編集長の秋山光輔が台湾に対する思いや台湾の紅白歌合戦、3.11記念イベントの裏側について独占インタビューを行った。
1. 三原慧悟さんについて
秋山:日本人ユーチューバーとして断トツのチャンネル登録者数を持つ三原さんですが、最近は旧正月に放送されている台湾の紅白歌合戦に出場するなど、活動の幅がどんどん広がっているようにお見受けします。これまでの経緯について教えてください。
三原:大学生のころ、「学生映画賞」という賞を獲得したことが最初のターニングポイントでした。大学時代、学生映画賞に3度応募し、3度目に受賞できたのですが、それが映像と関わる仕事をしたいと思う決め手となり、大学卒業後に新卒でフジテレビに入社しました。そこで制作を行っていたのですが、「あと5年は修業しないとドラマは撮れない」と言われ、環境にも給料にも恵まれていたものの、あと5年、作品を作らずそこに居るのは我慢できないと感じ、タイミング的にもユーチューバーとしてチャレンジしてみようと決心しました。ただ、当時日本にはもうHIKAKINさんなど有名なユーチューバーの方が既にたくさんいらっしゃっていたので、誰も居ない場所で挑戦してみようと思い、台湾市場を目指すことにしました。
秋山:「学生映画賞」を受賞することも、新卒でフジテレビに入社することも、どちらも非常に難しいことだと思います。その環境を離れて台湾に来たきっかけは何ですか?
三原:台湾という場所を選んだ理由は、高校時代に初めて行った留学先で、初めて触れた外国人=台湾人の優しさに感動したのを覚えています。それがきっかけで大学での第2外国語も中国語を選択し、一人旅でも台湾にやって来ました。面白い映画が撮れないかな?と思って台湾に撮影に来たこともあり、台湾とはいずれ将来的に関われたらいいなという思いが強く、当時台湾でユーチューバーをしている日本人がまだいなかったということもあり、台湾を拠点にしようと決めました。
秋山:三原さん自身もそうですが、三原JAPANメンバーのJUNちゃん(変態先生)も以前、映像関係の仕事を以前していたかと思います。元々回りに映像関係の方が多かったのですか?
三原:大学で演劇サークルに所属していたのですが、その時のメンバーでテレビ局に就職した人が多く、JUNちゃん(変態先生)もたまたまテレビ朝日に入社して、映像に関わっていましたね。
秋山:なるほど、そこからチームになっていったんですね。
三原:最初は僕が会社を辞めて一人でやっていました。最初から誰かを養うなんて到底できなかったので…始めた当初は収入も全然ありませんでした。活動を始めて1年たったあたりからフェイスブック上のフォロワー数が5万人を超え、仕事として案件を受けたり、イベントなどが行えるようになりました。
秋山:実はそのころ、弊社(台北経済新聞を運営している在台湾マーケティング代理店カケハシ)にも、三原さんからメールを頂いたことがありましたね。
三原:確かに、2015年ごろは自分で営業資料を作って台湾の代理店などに売り込みに行っていました。
秋山:それを経て今やチャンネル登録者数137万人、本当にすごいですね!
2.所属事務所カプセルとの出会い
秋山:それから、所属事務所であるカプセルと契約したのは何かきっかけがあったのですか?
三原:知名度がすこし上がってきて段階で、いろいろな事務所から声を掛けていただいたのですが、自分自身がまだ中国語を話せない時期でもあったので、台湾でカプセルという会社を経営している日本人の埴淵社長に相談に乗っていただいていました。イベント開催の時にもボランティアでいろいろと手伝っていただき信頼できる方だと思い、ユーチューブを始めるタイミングでカプセルに所属しました。カプセルも当時はユーチューバーの事務所ではなく、ゲーム案件の代理店として運営していて、自社でユーチューバーを育てたいというタイミングだったようで、一人目の所属ユーチューバーとして契約しました。
秋山:当時から、三原さんのSNSはエンゲージメント(いいね!やコメント率)が非常に高いなと思って拝見していました。
三原:日台文化の比較などのテーマが、台湾の視聴者に受け入れてもらえました。自分で編集していたので中国語の間違いもわからない状態で動画を発信してしまい、ツッコミも多かったと思います。
秋山:今も自身で制作しているのですか? 今後もクリエーターとして制作は続ける予定ですか?
三原:ユーチューバーはあくまで自分が動画クリエーターとして生きていくうえでの一つのキャリアとして行っていて、将来的にもその時代に合った映像作品を作っていくんだろうな、というビジョンがあります。
秋山:では、今後はユーチューブだけではなく、テレビや映画などの可能性も大いにあるということですね?
三原:十分にありえます!
3.サンエン台湾について
秋山:サンエン台湾結成のきっかけを教えてください。
三原:サンエン台湾を始めたのは僕がユーチューブを始めて3周年の日なんですが、それまでの2年間の活動の中で応援してくれる人がたくさんいるなか、同時にたたかれることも多くなっていました。中でも「台湾を利用するな」というニュアンスのアンチコメントが目立ちました。大半の人は日台の文化比較を楽しく捉えてくれていたようですが、一部の人には、例えば臭豆腐が臭いと動画で取り上げれば「台湾を馬鹿にして金稼ぎをしてる」「日本が好きな台湾人の感情を利用して金もうけをしている」などと批判され…でも、それがかえって「自分は台湾のために何ができるだろう?」と考えるきっかけにもなりました。それまでは台湾の人に日本に来てもらおう!というスタンスの動画が多かったので、今度は日本の人が見て台湾に来てくれるような動画を作ろう、と。ちょうどそのタイミングでJUNちゃん(変態先生)とTOMMYもチームに入ってくれ、自分自身もユーチューバーとして自立できて給料も払える状態だったので、今後はチームを組んで活動の幅を広げ、日台の情報を双方向に発信する架け橋になろう、と決めました。
「2021超級巨星紅白藝能大賞」出演時の様子
4.台湾の紅白歌合戦や東方大地震関連イベントについて
秋山:台湾の紅白歌合戦「2021超級巨星紅白藝能大賞」出場おめでとうございます。類を見ない快挙だと思います。
三原:正直、自分でも驚きました。ユーチューバーが出演すること自体非常に珍しかったようで、うまく時代の波に乗れたのかなと思いました。コロナの影響で無観客での収録でしたが、大きなイベントが中止にならずに行えたので、台湾の防疫政策に感謝の気持ちです。台北アリーナは日本でいえば武道館のような、とても大きな空間で、夢の中にいるような不思議な感覚でした。今年日本人で参加したのは台湾にいる自分たちだけだったので、日本のファンから集めた「台湾に行きたい」という思いを込めた日台交流の架け橋となるような映像を制作し放映しました。台湾の方から感動した、という声をたくさん頂けました。
秋山:3.11東北大地震関連イベントにも出演されたと聞きました。どのようなイベントでしたか?
三原:日台交流協会の主催で、「日台の心」と名付けられたイベントでした。主に東北からいろいろなブースが出展して、日本の伝統工芸を体験できるようになっていました。特設ステージでは日台に縁のある方々が出演し、東北大震災の時の台湾からの支援への感謝を伝えるイベントでした。日本人的には「あの時の支援ありがとう」の気持ちがまだまだ残っていますが、台湾人的には「困ってる人がいたら助けるのは当然。いまだに感謝を伝えてくれるなんて義理堅い」と言ってくれています。今は台湾がパイナップルの消費に困っているのを日本人が日本で買って支援していて、このような日台間の相互助け合いを今後もできればいいなと思います。
日台交流協会主催イベント「日台の心」出演時の様子
5.最後に
秋山:今後の展望についてお聞かせください。
三原:2015年から変わらない目標「台北アリーナで1万人のファンを集めて単独ライブを行う」こと、まずはこの目標を達成させたいです。ユーチューブは無料で鑑賞できるコンテンツですが、ファンの方々が「チケットを買ってでも見に行きたい存在」になるために、これからも頑張っていきたいです。ユーチューバーとしては、カプセルアカデミーというユーチューブを始めたてのユーチューバーへのレッスンにゲスト講師として参加したりもしました。僕自身、ユーチューブバブルはいったん落ち着いたと思っていて、ユーチューバーがどんどん増える一方なので、視聴者にとって選択肢が増えている状況ですが、量より質を重視した動画を、これからもどんどん発信していきたいです。日台の相互支援の観点では、自分たちはユーチューバーなので、一般目線でやはり観光情報などを発信して貢献していきたいと考えています。皆さん、今後も台湾の情報にご注目ください。
ありがとうございました!