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インタビュー:沖縄と台湾の架け橋 沖縄県産業振興公社台湾事務所の仲本正尚所長に聞く

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台北を拠点に、沖縄県と台湾の交流の架け橋となる「沖縄県の在台湾公的窓口」である 沖縄県産業振興公社台湾事務所の仲本正尚所長に、 インバウンド事業でこれまで沖縄観光に関する多くのコンテンツを台湾に向けて発信してきた 台北経済新聞編集長秋山光輔がインタビューを行った。

秋山 まずはプロフィールをお聞かせ下さい。

仲本所長 沖縄県庁から、昨年の4月に台湾事務所所長に着任して約1年半になります。 沖縄県の台北事務所として、経済・文化・観光などのサポートを行う総合的な 窓口の役割を果たしています。 沖縄と台湾は距離が近いため交流の幅も広く歴史も長いです。 着任前に沖縄コンベンションビューローが台北事務所をクローズし、 業務やメンバーを引き継いで現在の事務所としてスタートを切りました。 観光と物産といった各分野の連携をこれまで以上に図っており、 台湾現地で沖縄全体をバックアップしていく役割を果たしています。

秋山 台湾と沖縄は元々どのような流れで交流が始まったのでしょうか?

仲本所長 台湾の東側と沖縄は黒潮でつながっていて、大昔から漁業などを通して交流がありました。 沖縄と台湾は、歴史的背景は異なれど境遇がすごく似ていることも交流が盛んな 要因の一つかもしれません。 台湾東部は音楽フェスティバルなどで今でも沖縄との交流が台湾の中でも特に盛んです。

秋山 なるほど。元々、海を通しての交流が発端なんですね。 確かに、石垣島に台湾の人が多く住んでいたり、基隆の和平島にも沖縄の人が住んだりしていますよね。

コロナに関して

秋山 コロナ前後で台湾と沖縄の交流でどのような変化がありましたか?

仲本所長 コロナ前の、着任した昨年度の1年間は台湾から沖縄への観光客がどんどん増えてきたタイミングだったので、 台湾と沖縄双方からビジネスや交流に関する案件も多く、さまざまな分野でサポートしてきました。 2年目に差し掛かるタイミングでデジタルの取り組みが日本以上に必要だと感じ、 沖縄物産の台湾内でのPR方法の一つとしてユーチューバーを起用し、デジタルでの取り組みを本格化させていきました。

秋山 コロナ前は確かに観光客がどんどん右肩上がりで増えていましたね。 私もインバウンドマーケティング事業でコロナ前には毎シーズン5、6回は沖縄に行って 台湾ユーチューバーや番組の撮影などを頻繁に行っていました。沖縄が大好きな台湾の人は非常に多いですよね。 可能性は強く感じていました。

仲本所長 私は台湾に着任して、近いとはいえ台湾という異国の地でこんなにも沖縄が愛されているのだと初めて実感しました。

秋山 台湾で活躍されている日本人タレント夢多さんと、弊社のインバウンドに関する番組撮影案件で 一緒に何度か沖縄に行っていますが、 PRで日本各地を回ってきた夢多さんも「沖縄は日本の宝だ」と言っていました。 台湾の人に刺さるコンテンツがまだまだたくさんあります。

仲本所長 今は確かに沖縄の観光事業者にとって苦しい状況ではあります。ただ、沖縄の魅力が失われたわけでは無いということに自信をもって、前向きに取り組む姿勢が大事だと考えます。 豊かな自然環境や歴史や文化等の魅力、地域が持つ雰囲気にもう一度自信をもって、 その上で磨き上げ、知ってもらうことがこれから必要となります。知ってもらうために、 デジタル化や多言語化などが必要となりますが、コロナ禍で今行き来が出来ない中、 そうしたコミュニケーション方法を見直し、さらに魅力を発信していくことが重要だと感じています。

秋山 確かに、コロナ前は賛否両論ありますがインバウンドブームがすごくて、 観光客の受け入れ態勢が整っていないまま迎え入れていた部分があったので、 コロナ禍のタイミングで地を固め、改めてインバウンド対策を見つめる機会となりましたね。

仲本所長 デジタルマーケティングや多言語化などコミュニケーションの方法について、 伸び代はまだまだあると考えています。

秋山 日本をしっかり楽しんでいただく体制を整える時期なのかと私も感じています。 このコロナ禍を乗り越えて海外旅行が解禁されたら、 すぐにでも多くの台湾の人に安心して沖縄に旅行に行ってもらえるとうれしいですね。

仲本所長 今も台湾の人から、沖縄に行って沖縄料理が食べたい! 沖縄の海に行きたい!美ら海水族館に行きたい!などの声は非常に多いです。 首里城の心配をして下さる台湾の人もたくさんいらっしゃいます。その方々のためにも、 受け入れ態勢の向上が図れればと思っています。

台湾の人へ

秋山 最後に台湾の人へのメッセージをお願いします。

仲本所長 沖縄ガーデンというイベントを12月12日・13日、台北市のMAJI広場(花博公園)で開催します。 オリオンビールフェスタがコロナの影響で今年は中止されましたが、 台湾に住む沖縄好きが集まって沖縄の魅力を再確認する機会を作りたいと思い開催することとなりました。 沖縄の食べ物や音楽、美ら海水族館からのオンライン中継などを楽しんでいただければ。 それとは別に基隆の和平島で12月末から3月15日まで、長期の沖縄イベントを開催します。 ここでは台湾と沖縄の交流の歴史年表やレポートなどの文化的なコンテンツを展示するほか、 三線や琉装の体験ができます。 公園内の飲食店4店舗では沖縄の食材を使ったオリジナルメニューが楽しめ、 じっくり沖縄を堪能できるイベントになっているので、 ぜひ台湾に住む多くの方々に来ていただきたいですね。

秋山 歴史年表にはどんなことが書いてあるんですか?

仲本所長 沖縄県立博物館・美術館において沖縄視点で作成されたもので、 日本全体や台湾、沖縄についての交流の歴史が分かりやすく書かれています。 沖縄で初めて見た時に感動して、 ぜひ台湾の人に見てもらいたいと思い、翻訳作業を進めて実現させました。 来年は故宮博物館での琉球展の開催が予定されていますが、 故宮博物館の呉院長にも協力いただき、日本の専門家と台湾の専門家が一緒になって作り上げました。 個人的な思いとしては、実際台湾に住んでみて台湾の人はみんな沖縄を知ってはいる、 でも深いところまでの理解はなかなか浸透していないのではないかと感じていました。 沖縄への関心が高まってる今、このチャンスを生かして、ぜひ多くの人に見てもらい、 相互理解で交流を深めていきたいですね。

秋山 台湾に居ながら、さまざまな沖縄に触れることができそうなので、今月から来年にかけてのイベントがすごく楽しみです。 沖縄ガーデンや和平島でのイベント開催も間もなくなので、楽しみにしています。 これからの台湾と沖縄のさらなる発展に期待して、私たちもサポート役として頑張っていきましょう。 本日はありがとうございました。

 

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