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インタビュー:DIYおもちゃ・知育菓子紹介動画の先駆け カリスマクリエーター 安啾(アンジュ)さん

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 日本のDIY系おもちゃや知育菓子紹介動画の先駆けとして2012年ごろにユーチューバー活動を始めた安啾(アンジュ)さんは、ソーシャルメディアの総フォロワー230万人以上を抱えるカリスマクリエーター。近年日本観光やショート動画にも活躍の場を広げるアンジュさんに、編集長の秋山が、ソーシャルメディアの傾向や日本インバウンドについて話を聞いた。

秋山:台北経済新聞の読者に向けて自己紹介をお願いします。

アンジュ:皆さんこんにちは。アンジュと申します。クリエーターをしていて、台湾でユーチューブがはやり出した初期からユーチューバーとして活動しています。日本の変わっていてかわいいおもちゃが好きで、紹介やレビュー動画を中心に発信してきました。現在では観光情報やサブカルチャー、ライフスタイルの動画も制作しています。インスタグラムのリールなど他媒体にも積極的に挑戦しています。内向的な性格ですが、いろいろな考えを持っていて創作に生かしています。

秋山:アンジュさんといえば、タカラトミー社のしゃべった言葉をまねして話すおもちゃ「ハムスター - ミミクリーペット」の紹介動画がきっかけで知名度が急上昇しましたね。

アンジュ:今振り返ると不思議な体験でした。動画公開時点で反応はファンの間でとどまっていたのですが、ニュースメディアへ転載されたのをきっかけに、フェイスブック上で一気に拡散されました。友人に教えてもらって初めてバズったことを知りました。それ以降たくさんの方に見てもらえるようになりました。

秋山:タイムリーに反響が出たわけではなかったのですね。ほかに反響が良かった動画はありましたか?

アンジュ:日本の変わったおもちゃを紹介すると反響が出やすいです。例えば流しそうめんができるおもちゃですね。たとえ実用的でないおもちゃだったとしても、ファンにとって面白く新鮮に感じられたのだと思います。ほかにも知育菓子の紹介動画が人気でした。

秋山:アンジュさんはこのジャンルの先駆けでしたね。

アンジュ:DIY系などを多く紹介しました。当時はユーチューバーという概念すらまだなかった時期ですが、ユーチューブで珍しいものを見たいという人が多かったと思います

秋山:ユーチューブはいつから始めたのですか?

アンジュ:2011年です。大学二年生の時にゲームのマインクラフトの実況動画を撮ったのが最初です。大学卒業後にDIY系の動画で人気が出たのでシフトチェンジしました。

秋山:まるで台湾のヒカキンさんですね。アンジュさんの近況としては昨年12月30日に初のシングル曲をリリースしましたね。楽曲製作に至ったきっかけを教えてください。

アンジュさんの初シングルMV

アンジュ:もともと歌が好きだったこともあるのですが、2017年ごろ、台湾のユーチューブかいわいで曲を出すことが流行していたのです。挑戦したくて、今回30歳の誕生日を機に実現しました。ユーチューバーとしてのこれまでを込めた内容で、好きなミュージシャンを集めて制作しました。私にとって記念すべきマイルストーンとなりました。

「視聴者はユーチューバーの細かい感情をみている」

秋山:ユーチューバーとして成功しているアンジュさんに、ずばりバズる秘訣(ひけつ)、再生回数を伸ばす秘訣を聞きたいです。普段から創作のネタとなる引き出しを蓄積しているのでしょうか?

アンジュ:有名になるために日々努力しているクリエーターはたくさんいますが、結局は運の要素が強いと思います。その時と環境と身の回りの人との巡り合わせが鍵となり、常に準備を怠らず、創作への情熱を保ち、機会がやって来たらつかみ取ってください。私は普段から思いついたことはすぐに実践しています。

アンジュ:自分が好きなことに熱中し研究することも重要です。いざ動画にした時に、それが本当に好きなのか、感情がファンに伝わるからです。ユーチューバーは芸能人と違って一般人の感覚に近いため、ファンはユーチューバーと友達になりたいと思ってくれている人が多いです。ファンは友達同士のようなフィーリングを抱いており、ユーチューバーのリアクションを細やかに観察しています。

秋山:自分に興味があることに対し、熱量を持って伝えることが大事なのですね。台湾人視聴者の特徴は何だと思いますか?

アンジュ:日本と比べてそこまで違いは感じません。どの地域でも、支持してくれる人もいれば、批判的な人もいます。

秋山:いわゆる炎上ネタについてどう思いますか?

アンジュ:台湾も初期は炎上を狙う手法が見られましたが、今は減りましたね。世間の注意が今流行中のショート動画に移っていて、ユーチューブでの炎上手法の効果があまり見込めなくなったことが要因かと思います。私自身の場合は「最も~」など、言葉の誇張でとどめています。ユーチューブは子どもも見ているので過激な手法はあまり良くないと思います。

「流行は一周する」

秋山:新たなソーシャルメディアのプラットフォームができた時はルールが整備されていない分、炎上しやすいですね。最近ユーチューブでも越えてはいけない境界線が浸透していると感じます。ソーシャルメディアにはどのような流れがあると思いますか?

アンジュ:日本だとTikTok、台湾だとインスタグラムのリール、ユーチューブのショートが流行していますが、ファッション界で「Y2K(2000年前後のテイストを取り入れたカジュアルな着こなし)」のブームがZ世代で再燃しているように、流行は一周しています。ソーシャルメディアでもショート動画がたくさん見られて飽和してくるころに、視聴者はまた以前の動画時間の長い媒体へ興味が戻ると予測します。ただそれがいつになるかは分かりません。

秋山:ユーチューブの人気は今後も変わらないと思いますか?

アンジュ:そう思います。影響力のあるクリエーターがたくさんいますし、新規参入も続いていますので、伸びしろはまだあると思います。また動画時間が長い方が、ファンはよりクリエーターの性格を知ることができ、交流の機会も増えるためポテンシャルがあります。ショート動画だとファンのクリエーターに対する印象が薄くなる傾向があります。

秋山:アンジュさんのリールにはプロ意識を感じます。いいね数や再生回数もすごく多いです。

アンジュ:私は動画のクオリティーを追求するタイプで、動画撮影時にはカメラマンと相談しながら、撮影ロケ地を調べて自分で決めています。60秒や90秒の動画のためにロケ地が遠くても構わず撮りに行きます。限られた時間の中でどれだけ内容を充実させられるか、視聴者が欲しい情報を届けられるかを常に模索しています。テンポ感や情報の伝え方にこだわっています。

秋山:アンジュさんは日本に留学経験があるとのことですね。

アンジュ:池袋の日本語学校に1年間留学しました。幼い頃から日本のドラマ、アニメを見て日本の環境に憧れを抱いていたため、夢をかなえるために留学を決断しました。とても良い経験ができました。日本人はすごく気配りできて、職人魂があってものづくりのクオリティーが高く、使う人のことを考えて設計されているのを感じます。

日本へ言語留学時代のアンジュさん

秋山:小さい頃に影響を受けた日本のアニメは何ですか?

アンジュ:数え切れません。強いていえば「おジャ魔女どれみ」「カードキャプターさくら」など魔女っ子系が大好きです。

秋山:確かにアンジュさんの動画からプリンセスっぽさというか、独特な雰囲気を感じます。そういう世界観を演出できるクリエーターは少ないですね。

アンジュさんの初シングルMV

秋山:日本で思い出に残っているエピソードはありますか?

アンジュ:日本語学校の先生は普段から厳しく指導してくれていたのですが、ある時仕事で香港のディズニーランドへ出張に行くことになり、授業を休むことがありました。学校では先生は私が授業を休むことに賛成はしてくれなかったのですが、後日個人的にくれたメールでは「私がアンジュさんだったら絶対に授業を休んで仕事に行くと思います」と応援してくれたのです。普段と異なる先生の言動に感動しました。日本人は、仕事は仕事、プライベートはプライベートと、公私を分けているということが非常に印象深かったですね。

秋山:とても感動的なエピソードですね。

秋山:台北経済新聞の運営元であるCAKEHASHIは、日本のインバウンド事業をお手伝いしています。アンジュさんが日本でお薦めの観光地を教えてください。

アンジュ:定番な観光スポットだと思いますが、浅草が非常に気に入っています。都心から近いためアクセスしやすく、日本文化が感じられるお寺や露店もあって楽しいですし、この辺りの宿も値段がリーズナブルで総合的に良いです。もし日本に行ったことがなければ浅草をお薦めしますね。ホテルは客室からスカイツリーが見えるよう間取りが設計されていたりするのも良いところです。

アンジュ:ほかにも伊豆のムーンロードがお薦めです。日本百名月に選ばれたスポットで、月の光が海に反射して一つの道になって見える場所です。昼間と夜の景色の移り変わりもすてきな場所です。

秋山:お薦め、ありがとうございました。アンジュさんは日本の観光Vlogなども上げています。日本の観光はどんな紹介の仕方をすれば、台湾人に刺さりやすいと思いますか?

アンジュ:日本各地にはその地が誇る特色があると思います。以前仕事で行った淡路島には、日本で最初にできた島という神話があります。そうした面白くて台湾人にあまり知られていないストーリーを発信すると反響を得やすいと思います。

秋山:私の故郷である京都で、北部にある伊根のリール動画が台湾でバズったりしていて、北部をうまくPRできたらと考えています。大江山には「鬼伝説」がある場所で、鬼の像がたくさん立っているんです。ほかにも天橋立行きの電車には、一両だけ車内で食事できるようになっています。車窓からの景色はまるでジブリの世界で、PRできるといいなと考えています。

アンジュ:すごく良いと思います。台湾人がまだ行ったことのないような場所は興味を持ってくれると思います。1カ所だけでなく各地の観光スポットをピックアップして動画のストーリーを構成させていけるといいですね。

秋山:これで最後の質問となります。日本人読者に向けてメッセージをお願いします。

アンジュ:日本の皆さん、台湾にぜひ台湾にお越しください!

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