日本のNHKと台湾のPTS(公視)が共同制作したドラマ「路~台湾エクスプレス~」に主人公の春香の同僚・林芳慧役として出演したアンナ・リーこと安娜李さんに、以前からの友人である台北経済新聞編集長の秋山光輔がドラマ出演に対しての思いや撮影の裏話、今後の台湾と日本の交流について独占インタビューを行った。
1.安娜李(アンナ・リー)さんについて
アンナさんと芸能活動を結び付けた日本の留学経験
秋山:アンナさんとは、5年ほど前に日本の声優が台湾でライブをした際に2カ国語でMCをされていたのがきっかけで知り合い、そこからのご縁ですね。台湾現地で日本と台湾の交流に大きく関わっているアンナさんですが、今回ドラマを見た日本の方に、改めて芸能活動のきっかけなどから簡単に経歴を自己紹介いただけますか。
アンナ:大学時代に、母校の姉妹校であった宇都宮大学へ交換留学として日本を訪れました。元々日本の大学院への進学を考えていましたが、お世話になった教授から「アンナの性格だったら日本の芸能界に向いているんじゃないか」と芸能事務所のオーディションを紹介してもらい、運よく受かったので所属タレントになりました。このことがきっかけで、台湾ではなく日本の芸能界で活動を始めました。日本では「9頭身のトライリンガル」というキャッチコピーを付けてもらい、映画、バラエティー番組に多く出演しました。台湾では女性歌手グループ「ZERO+」のメンバーとしていくつかのミニアルバムをリリースし、歌やダンスを披露していました。その他、モデルや、女優業、タレントとして活動を行っており、ここ最近では番組やイベントのMCのお仕事も多く頂いています。今年で13年目を迎えました。
秋山:イベントMCと言えば、「AEA 2019年アジアeスポーツ大賞」では総合ベスト司会者賞を受賞されていましたね。おめでとうございます。
アンナ:ありがとうございます。これまでのeスポーツ大会での司会の実績も総合評価していただけ、このような素晴らしい賞を頂くことができ大変うれしく思います。以前行われた、オンラインカードゲーム「ハースストーン」の世界大会でMCをやらせていただいた際、そこで知り合った18歳のノルウェー選手を励ますために「勝ったらラップを作って歌ってあげる」と言ったら、本当に勝ち抜いてくれたことがとても感動的でした。約束通り即興でラップをプレゼントしたら、約1億人の視聴者の皆さんから「ラップの神」というあだ名を付けてもらいました。
秋山: eスポーツは若い選手がたくさん出場しているので、自信をつけた時の想像を超える力にこちらが圧倒されてしまいますよね。選手の若者たちに寄り添って応援されたアンナさんの情熱が、今回のベスト司会者賞を選ぶ審査員にも伝わったということですね。アンナさんには、以前弊社カケハシが主催した1回目の「キャンパスコレクション ? 台湾」の司会もお願いしましたね。日本のキャンパスコレクションが初めて海外進出した1回目だったので、その際にも日本と台湾の若者の交流にもお力添えいただきました。
「AEA 2019年アジアeスポーツ大賞」で総合ベスト司会者賞を受賞した時の様子。
2.日台共同制作ドラマ「路~台湾エクスプレス~」について
日本と台湾の深い歴史と情熱をかけた思いを伝えたい
秋山:そんなマルチに活躍されているアンナさんですが、今回、日台共同制作ドラマ「路~台湾エクスプレス~」に出演して、普段のドラマ撮影と今回で違いはありましたか。
アンナ:まず驚いたことはスタッフの多さです。日台両国のスタッフ総勢約200人で一つの作品を創り上げました。台湾の撮影クルーは、テンポ良く融通を利かしながら撮影が進んでいきます。一方、日本の撮影クルーの方々は、いい意味でこだわりが強く作品に対して妥協しない精神が伝わってきました。例えば、この作品のシーンで20メートル先の花瓶と画面のアングルを調整するのに1時間を要しました。また、今回着用したチャイナドレスの事前試着に、日本からもスタッフの方がわざわざ確認のために訪台されました。日本スタッフの作品作りに懸ける思いを感じて、演者もより一層身が引き締まる思いでした。
こだわりのチャイナドレスのシーン
秋山:そのこだわりが視聴者を魅了する作品に仕上げていくのですね。アンナさんが演じられた林芳慧は、主演の多田春香役、波瑠さんの同僚であり、さらにエリックと春香を結び付けるキーパーソンとなる役を演じられていましたね。演じるに当たって特別に意識されたことはありますか?
アンナ:常に情熱をもって演じました。私自身「運命」という話を聞くと、根掘り葉掘り聞いて役に立ちたいと思うタイプなので、今回の役にピッタリでした。演じる上で自然体を常に意識しているので、少しおせっかいなキャラクターも自分の性格と重なる部分があり、自然な演技が出来ました。
秋山:撮影の際の裏話、ここだけの話があれば教えてください。
アンナ:原作では林芳慧は原住民ではなかったんです。しかし制作スタッフ達の台湾文化を紹介したいという思いから、原住民の設定になり花蓮の民族の撮影シーンが追加されました。台湾原住民のアミ族の伝統的なダンスのシーンは本格的に地元の人に教えてもらいましたが、実家に訪れたシーンではほぼ私のアドリブでした。私自身の天真らんまんな性格も、春香をダンスで元気づけたいというシーンにピッタリでした。日本と台湾の文化交流を、明るく温かみのある表現でご覧いただけたかと思います。
秋山:個人的には、花蓮のシーンで林芳慧が春香に鞄を掛けてダンスに参加させるシーンがとても印象的で、一体感を感じ感動しました。撮影は日本と台湾の両方で行われましたか?コロナの影響を受けるギリギリでクランクアップしたと伺いました。現場でも何か影響を感じましたか?
オフィスシーンのアンナ・リーさんと波瑠さん
アンナ:撮影は両国で行われ、私も2度訪日しました。2度目の訪日撮影は2月下旬だったので、行く時には周りに止める人もいました。現地では消毒液やマスクの徹底した準備や対策を励行していたので問題なく撮影を進めることができました。本当にギリギリで運が良かったです。
秋山:制作メンバー全員のこのドラマに懸ける情熱が完成へと導いたのですね。ちなみにアンナさんは日本の新幹線に初めて乗車されたのはいつですか?
アンナ:初めて乗車したのは、3.11の震災後です。留学当時から芸能活動の時にも大変お世話になった友人のご両親が心配で、福島へ初めて会いに行った際に乗りました。新幹線は一番早く大切な人の場所へ行けるとその時改めて感じましたし、本作品にも描いていますが、日本の新幹線技術を台湾でも再現できたことをうれしく思います。
秋山:とても感動的なお話ですね。アンナさんのこのエピソードで、新たなドラマがもう一作品撮れそうですね。
新幹線プロジェクトの最後を見守るシーン。朝井大智さん、波瑠さん、アンナ・リーさんら
3.アンナさんが感じる、これからの日台交流の展望
お互い感謝し感謝される、両国の交流は今後も続く
秋山: コロナが終息し、もし日本に行けるとしたら何をしたいですか?
アンナ:まず日本に行ったら、東京赤坂豊川稲荷神社で「願ほどき」がしたいです。以前稲荷神社で「もっとみんなに幸せと良い作品が届けられますように」と願掛けしました。今回、この作品で願いが多少なりとも実現したので、感謝を込めて行きたいです。日本には学生時代から芸能活動をしていた頃まで、たくさんの方にお世話になったので恩返しの旅にしたいと考えています。
秋山:最後に、今後の展望や目標を聞かせてください。
アンナ: この作品で12年ぶりにNHKに出演しました。同時期に台湾でお仕事のオファーをいくつか頂きましたが、この作品に集中するため全てお断りしました。それだけ、日台交流の本作品に真剣に向き合いました。MC、女優、タレントとして活動していますが、原点は歌とダンスなので、今後はNHKの紅白歌合戦に出演することが夢です。日本の皆さんにもっと恩返しできるように、YouTubeチャンネルを立ち上げて台湾と日本の文化交流の架け橋となりたいです。
秋山:初めてお会いした時から、何事にも情熱的に取り組む姿勢が変わらないことにとても尊敬しています。今後もさらなる活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。
取材は台北経済新聞本部であるカケハシのセカンドオフィスで行いました。
=== 告知 ===
台北経済新聞は台北を拠点に活動するインバウンド会社 [カケハシ/Cakehashi] が運営しています。台湾からのインバウンド集客のことについてはお気軽にお問い合わせください。