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インタビュー:日本インバウンドKOL、俳優、旅行作家などさまざまな顔を持つマルチタレントEric(艾瑞克)さん

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 6月10日、日本政府は2年2カ月ぶりに外国からの添乗員付きパッケージツアー受け入れを再開し、ビザの取得が出来た外国人旅行客らが徐々に日本に旅行目的での入国を始めた。一方、台湾では現時点で政府交通部がツアーでの出国を禁止しているため、すぐに多くの台湾人が日本に観光旅行に行けるようになるわけではないが、6月15日より、海外からの入国者の検疫日数が従来の7+7日(7日間の自宅隔離+7日間の自主管理)から3+4日に短縮されるなど、徐々に海外旅行の再開に向けて緩和が進められている。

 台湾国内各種オンラインサイト等で「海外旅行の再開後に最初に行きたい国は?」をテーマにした調査がよく行われているが、日本は多くのサイトで1位になっており、円安などの影響もあり多くの台湾人が今まさに日本旅行に関心を持っている。

 旅行作家、MC、俳優とさまざまな顔を持つEric (艾瑞克)さんは過去に日本の旅行本を出すほどの日本通。コロナで日本と台湾の往来ができないこの2年間、中華圏に向けて日本のインバウンドについての情報発信をKOL (キーオピニオンリーダー)、インフルエンサーとして続けてきたEricさんに、編集長の秋山がインタビューを行った。

 

秋山:まずは日本の読者の皆さまに、自己紹介をお願いします。

 

Eric:日本の皆さまこんにちは、Ericです。僕は、以前俳優として活動していました。今でもバラエティー番組などには出演していますが、役者時代にオフがある度に旅行に出かけていました。その旅行について記録を残すようになり、2010年頃から旅行ブログを書き始めました。当時は、旅行番組のMCの仕事をしていたので、ロケ先での旅行の記録も趣味としてブログに書いていました。ブロガーとしての最初の仕事は2015年の静岡の案件でした。それまでは何度も自腹で日本に行っていましたが、静岡鉄道主催のファムツアーコンテストで選ばれ、招待いただきました。その後、日本旅行に関する仕事が増えていき、俳優ではなくKOLに徐々にシフトチェンジしていきました。僕は台湾生まれですが中学卒業後にカナダに約10年間住んでいたこともあり、英語が話せるので、日本以外の香港や韓国、フランスなどに行くことができたのも僕の強みです。多くの台湾人にとって、日本は最愛で最も身近な外国で、僕の人生初海外も日本でした。小学3年生、10歳の頃です。家業が日本との貿易に関わる仕事だったため、両親は頻繁に日本に行っていて、特に日本語の勉強をしていたわけではありませんが、小さい頃から日本語を耳にする機会が多くありました。祖父母も日本語を話していました。カナダにいた時に芸能界入りするきっかけとなるコンテストを受けたのですが、その時の賞品がバンクーバーから東京への日本航空の航空券だったのです。晴れて入賞し、その航空券を手に入れて東京に遊びに行きました。大人になって初めて自分で行く日本旅行だったため、たくさん予習をして臨みました。食べたいもの、行きたい場所、下調べをしていろいろなプランを立ててみて、この作業を面倒に感じる人もいると思いますが、自分は旅行の下調べやプランニングをこんなに楽しいと感じる性格なのだと気づきました。

台湾でさまざまな日本のエリアを紹介するイベントに登壇するEricさん

 

秋山:なるほど。そのような背景から、今の俳優兼バラエティータレント兼MC兼旅行作家兼KOLといういろいろな職業をマルチに兼任するEricさんが完成したのですね。

 

Eric:気がつけばマルチに活動していました(笑)。日本でも放送されていたドラマ「公主小妹(ろまんす五段活用)」以外に「萌学園」という子ども向けドラマに2010年から2016年の約7年間、レギュラー出演していました。たまたまコンテストに入賞し俳優の道を進むことになったけれど、30代になり、このまま年齢を重ねていくと子ども番組を続けるのもしんどいだろうし、これからは自分の本当にやりたいことをして生きていきたいと思い、大好きな旅行関連の仕事の道に進むことを決めました。旅行番組のMCの仕事をしているとき、ドラマ撮影のオフにプライベートで行く旅行など、旅をしている時の僕はとてもハッピーでした。月火水木はドラマの撮影をして、金土日に日本に旅行に行くような生活をしていました。ちょうどその頃、「ブロガー」という職業が流行っていたので、自分の興味のある旅行に関するブログを書いてみようと思い、気づけばさまざまな職業をマルチに兼任していました。

俳優として「萌学園」に出演するEricさん

秋山:日本に関する書籍を以前、出版されていますね?

 

Eric:2016年当時の僕は、俳優として知られていましたが、2014年頃から本格的にブログを書き始め、お遊びではなく本気でプロの仕事として書き物に取り組んでいる作者としての僕自身を皆さんに知ってもらいたいと思い、本という作品を残そうと決めました。多くの芸能人が出版する本は写真メインのものが多いですが、僕はそうではなく旅行に実用的な本を作ろうと努めました。本の内容を完成させてから3社の旅行関連書籍の出版社に送り、そのうち2社がすぐに連絡をくれ、1週間以内に契約を交わし出版に至りました。掲載されている内容は全て僕自身で書いたもので、写真も全て僕自身が撮影したものなので、読者にとってはよりリアルな内容だと思います。「step by step」というテーマで、例えば京都に関する記事では、関空スタートでチケットの買い方から電車の乗り換えなどの手順までをステップごとに解説しているのが特色です。

秋山:その後、日本関連の仕事が増えていったのですね。

 

Eric:静岡への招待や本の出版も経て、日本への旅行番組のロケや、ブロガーとしてのファムトリップなどの仕事が増え、多い年には1年に15回も日本に行きました。それに加え、他の国への旅行案件も増え、1カ月に5回出国した時もありました。2019年には宮崎と鹿児島へ行き、台湾に戻ってきて仕事をして、その3日後に佐賀へ飛んだこともありました。以前は、案件の依頼でブロガーとして招待されたファムトリップで茨城を訪問した翌週に、ロケ番組でまた茨城へ行き、全く同じ行程を紹介したこともありました。タイでも同じようなことが以前ありました。KOLと番組MC、どちらの仕事も受けられるのが僕の特色です。個人では旅行で行けないような非公開の場所も、ロケ番組だと観光協会などが手配してくれるので入ることができるので、より多くの体験をさせてもらっていると思います。

茨城県へファムトリップ、ロケ番組撮影の様子

秋山:日本で一番印象的だったことは何ですか?

 

Eric:一番を選ぶのは難しいですね。僕は仕事以外にもプライベートで両親を連れて日本旅行に行ったこともありますし、もう50回以上行ったことがあるので一番を決めるのは難しいです。

 

秋山:では、東京や大阪などは多くの台湾人が行ったことあると思いますが、地方都市で印象的だったことがあれば教えてください。

 

Eric:山陽山陰地方は台湾人にとってあまりなじみのないエリアかもしれませんが、とても良かったです。プライベートで岡山と鳥取に行きましたが、そこにしかない特色があると思いました。九州も、台湾人観光客は非常に多いですが、九州はとても広く、まだまだ知られていない場所もたくさんあります。例えば長崎の九十九島。日本人でも知らない方が多いようですので、台湾人はもっと知らない場所だと思います。あと、関西は多くの台湾人が好む場所ですが、大阪は大阪、京都は京都、それぞれに特色がありますね。コロナ前に最後に行った日本旅行は関西でした。アフターコロナには、宮城県の鳴子峡に行ってみたいと思っています。これまでに行ったことのある場所はたくさんありますが、それでもまだまだ行ったことのない場所はたくさんあります。

秋山:日本人の私も行ったことのない場所をご存知ですね。何か日本で体験した感動秘話はありますか?

 

Eric:以前沖縄で、日台ハーフの友達の結婚式に出席したことがありますが、とても感動したのを覚えています。沖縄といえば、道が広くて台湾人の僕にも運転しやすいと感じました。2019年には北海道でもレンタカーを自分で運転しましたが、吹雪で前が見えなくてヒヤヒヤしました。

 

秋山:沖縄や北海道でレンタカーを借りる台湾人の旅行客は非常に多いですね。以前、弊社も沖縄県のレンタカー会社からの依頼で、日本でレンタカーを借りる際の注意喚起を目的とした動画をユーチューバーと制作したことがあります。Ericさんは、地方自治体やJNTOからの依頼で日本を紹介することが多いのですか?

 

Eric:以前、JNTOからの依頼で関西と、山陽山陰地方に行ったことがあります。取材で写真を撮って記事を書き、Visit Japanサイトに掲載されています。日本では多くの機関や団体が合同で観光に取り組んでいるので非常にいいと思います。公共団体、民間企業にかかわらず、皆さん丁寧で心がこもっていて、真剣に向き合っているんだと毎度、実感しています。

 

秋山:では、改善した方がいいと思うことはありますか?

 

Eric:正直、あまり無いです。最高だと思っていますが、強いて言うなら喫煙文化や18禁コンテンツが非常に身近にあることが気になります。文化の一部なのでしょうがないと思いますが、新宿など街歩きをしていると18禁エリアに迷い込んだことがあり、一般の人が出歩いている繁華街から非常に近いと思いました。ただ、日本は治安が良く安全なので、特に不安を感じているわけではありません。タバコは、僕が吸わないうえに台湾は室内全面禁煙なので特に気になるのだと思いますが、以前、青森の「ねぶた祭り」に行った際に周辺ホテルが満室で喫煙ルームに宿泊しなければならなかったことがあり、部屋自体にタバコの匂いが染みついていて気になったことがあります。

ねぶた祭りに参加し、その様子を台湾でのオフラインイベントで来場者に伝えた。

秋山:ねぶた祭りにも行かれたことがあるんですね。

 

Eric:はい。一回は仕事、一回はプライベートで行きました。仕事で行った際には、台湾に戻ってきてインバウンドイベントで講師としてねぶた祭りでの実体験をシェアしました。僕はKOLでありタレントなので、セミナーや番組で話すことが得意なのが強みだと思っています。コロナ期間中も、鳥取県のオンラインイベントで講師として旅行講座を行いました。台湾はその頃外出自粛期間中だったので、観客の皆さんもオンライン参加で、鳥取県の現場からは砂丘でラクダに乗ったリポーターとライブでつなぎ、リアルな状況を参加者に伝えました。プライベート旅行だけでなく、鳥取市から招待いただいて何度も行ったことがあるので、もう何でも答えられますよ。僕が撮影した写真も皆さんにお見せしました。日本の各地の皆さんは台湾の皆さんに忘れられないために、コロナ期間中も熱心に台湾マーケットに向けて活動されていて、感心しました。

鳥取旅行の実体験をもとに、コロナ禍でもオンラインで鳥取県と視聴者を繋ぐPRイベントを行なった。

 

秋山:最後に、メッセージをお願いします。

 

Eric: 2022年のうちに日本に自由に行けるようになることを祈っています。まだ行ったことがない場所もあるので、行ってみたいです。

 

秋山:まだ行ったことがない場所では、どこに行ってみたいですか?

 

Eric:広島に行ってみたいです。山陽山陰地方は何度も行ったことがありますが広島は通過しただけで滞在したことはありません。広島は台湾でもすごく有名で、「広島之恋」という有名な歌もあります。広島に行って、海鮮を食べたいです。四国もまだ行ったことがないので行ったみたいです。広島と四国に行けば日本全国制覇できます。

 

秋山:今後も、より多くの台湾人の皆さんに日本の良さを伝えていっていただき、インバウンドを一緒に盛り上げて行きましょう。本日はありがとうございました。

 

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