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インタビュー:日台中をルーツに持つ混血俳優・朝井大智さん 日台中の架け橋に

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井浦新さんや田中麗奈さんらが所属する日本のマネジメント事務所「テンカラット」に所属する俳優の朝井大智さんは日台中のルーツを持つ日中バイリンガル俳優。2019年まで台湾を拠点に活動。編集長の秋山とも台湾時代に交友関係にあり、日本での活動を3年間経て、今回リモートでインタビューを行った。

秋山:大智さん、お久しぶりです。前回台湾でお会いした以来なので約3年ぶりですね。この度はTBS系の新ドラマ「最愛」への出演決定、おめでとうございます。これまでの日本での活躍、台湾からも拝見しています。

朝井:ありがとうございます。3年前に日本に引っ越し、以来日本を拠点に俳優活動をしています。

・経歴
秋山:まず、プロフィールや経歴などの自己紹介をお願いします。

朝井:台湾出身の父と日本人の母を持つ僕が日本で生まれ育ったのは、祖父が台湾で戒厳令が引かれる前に京都大学に留学し、その後も京都に住み続け、父が生まれ日本で母と出会ったからです。中学3年生の時に家族の事情で香港に引っ越すことになりました。その後、上海交通大学へ進学したため4年間を上海、2019年までの9年間を台湾で過ごしました。上海に留学したのは、祖父の考えで中国語は話せないといけないという家の方針があったからです。上海に住み始めた大学1年生の時にモデル活動を始め、オーディションに合格し、台湾のアクエリアスのCMに出演。そして台湾でもモデル活動を行っていました。

しかし、上海交通大学は卒業が難しく、卒業に向けて勉学に集中しなければならなくなり、いったん芸能活動はやめて、日本企業への就活も始めていました。途中、上海戯劇大学に研究生として通うチャンスがあり、芝居にはそこで初めて触れ、台湾映画「セデック・バレ」の日本人キャストとして声をか掛けれ短期間なら就活にも支障がないだろうと撮影に参加。そのことがきっかけで4月の入社まであと数カ月あるし、それまで自分のルーツである台湾でチャレンジしてみようと思い、完全に就職前の記念のつもりで始めた台湾芸能界での仕事をそこから約9年間行いました。

秋山:数カ月のつもりで台湾に来てみたら、自分のルーツであるということもあり大智さんにピッタリ合ったんでしょうね。それからの台湾での活躍ですが、御茶園のCMはテレビで頻繁に放送されていたのを覚えています。コンビニ等にもポスターやシールが貼られていたので、台湾の人に広く顔が知られるきっかけになったのではないでしょうか。その他、主役で出演されていた瑞穂牛乳のCM動画がバズっていたのも記憶に新しいです。

朝井:台湾ではモデル事務所に所属していたので、CMの仕事が続いていました。瑞穂牛乳の短編コマーシャル映画では新米シングルファーザーの役でしたが、そこでの演技を監督が見てくださり、中国ドラマへの出演が決まりました。全編中国語で20数話の撮影は初めての経験でした。

秋山:中国の現場と台湾や日本の現場はどんなところに違いがありますか?

朝井:中国ドラマは台湾や日本と違って完全にアフレコなんです。なので、現場で音声は録らず、カメラが回っている最中に監督が「髪をかきあげて」などの指示をしてくるので驚きました。台湾や中国では撮影前にあいさつや自己紹介が無く、いきなり始まります。日本に帰国したばかりの頃は、その違いになかなか慣れませんでした。

・先祖の台中・霧峰林家 日本との架け橋
秋山:先ほど先祖のお話がありましたが、大智さんは日本でいう財閥に当たる「台湾五大家族」の「霧峰林家」子孫だそうですね。

朝井:実は父方の先祖に当たり、僕の名前も家系図に書かれています。笑

秋山:「霧峰林家」を題材にした2013年公開の映画「阿罩霧風雲」では自身の先祖役を演じられ、2015年公開の続編「阿罩霧風雲 II-落子」では3人の主役のうちのひとりを熱演されていましたね。

朝井:この映画は台湾映画界の巨匠李安(アン・リー)監督の弟である李崗(ガン・リー)監督の作品です。元々李崗監督が台中にある林家に、よく視察に来られていたそうです。

秋山:日本の人には安室奈美恵さんと台湾の大人気歌手ジョリン・ツァイ(蔡依琳)さんコラボ楽曲「I’m not yours」の撮影地として知られている「国定旧跡霧峰林家」ですね。歴史が感じられる壮大な素晴らしい建造物だと思います。

朝井:その林家に、毎年1回親戚一同が集まるときにちょうど李崗監督があいさつに来られていて、叔父が監督に僕も芸能活動をしていることをアピールしてくれました。笑

僕自身モデル活動をしていて最初は興味がなかったのですが、徐々に「自分の先祖に関する映画に出演したい」と思い、マネジメント会社を通しても問い合わせてみたが、清の時代の話なのに僕の顔が現代人すぎると却下されたのです。しかし数週間後に「清の時代の辮髪スタイルにするために、至急明日スキンヘッドにできるか?」と電話が。何と曽祖父の青年期の役で出演できることになったのです。すぐにスキンヘッドにするために床屋にいきました。

実際、僕は林家の子孫ですが、正直自分の人生にあまり関係ないと思っていました。日本に生まれたのもあり、実感することが全く無く、僕の両親も霧峰林家に関しては一切話すことがありませんでした。しかし、映画製作の準備期間に製作会議に特別に参加させていただき、先祖と歴史について勉強し、中国台湾日本全てにおいて政治や歴史に関わった歴史に名が残る一族だったことを知りました。また、その一族の末裔(まつえい)的な自分だけではなく、台中にルーツをもつ僕自身のDNA的な部分で「日本の人に台中をもっと知ってもらいたい」と思っています。今後は、台中につながれる仕事や作品に参加し、台中の発展に貢献し、ゆくゆくは日本の「台中観光大使」になることができれば最高ですね。

・今後の展望
秋山:「台中観光大使」はまさに適任だと思います。ただ、現在はコロナの影響もあり、しばらくは日本から出られない状況が続くと思います。今後の展望についてはどのようにお考えですか?

朝井:日本に来るまでは、台湾や中国でしか仕事をしたことがありませんでしたが、小さい頃から見ていたのは日本のテレビでした。日本のドラマや映画に憧れがあり、ずっと日本で働きたいという憧れがありました。日本で活動を始めて3年たちましたが、今はもう憧れの世界ではなく、「もっと日本で日本の俳優として確立したい」という夢に向けて仕事をさせていただいています。これまでは、台湾で主役級を演じた経験があっても日本で実績がなければ評価されにくい時代でしたが、ディーン・フジオカさんの活躍により、これまでアジアで活動してきた人への見方が変わってきて、プラスに受け取ってもらえるようになったので、今まで台湾・中国で培ってきた力を発揮したいです。

秋山:10月15日から放送される吉高由里子さん主演の新ドラマ「最愛」についてお聞かせください。

朝井:TBS系列で毎週金曜22時からの放送で、現在撮影中。僕は大学院生役を演じています。「アンナチュラル」というドラマが好きで何度も繰り返し見ているのですが、同じプロデューサーと監督が本作品を手掛けています。新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督の作品に出演できるなんて、台湾で頑張っていた頃の自分には想像もつきませんでした。メークさんたちから聞ける裏話もたくさんあり、憧れの製作チームに囲まれ、3年前に台湾で思いもしなかったような現場で撮影でき、興奮度MAXです。まだ後半の台本をもらっていないので、自分自身もどんな展開になるのか楽しみながら撮影に臨んでいます。オンエアをぜひ、お楽しみください。

秋山:さまざまな国で培われた経験を生かして、朝井さんが日本でどのような一面を見せてくれるのか大変楽しみです。新ドラマ「最愛」のオンエアも楽しみにしています。

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