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食を通して日台文化交流 農業体験も

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 台湾は5月のコロナ警戒レベル3に伴い、5月24日からレストラン内での飲食を禁止していたが、7月下旬ごろから感染者が減少しコロナ警戒レベル2に引き下げられ規制も徐々に緩和された。10月5日にイベント規制緩和や、レストラン内でのアクリル板の使用や1.5メートルの間隔保持の制限が解除された。

 規制緩和を受け台湾で活動する調理師の須賀恵美さんが11月7日、小瓢蟲有機農家(台中市東勢区)とコラボし、料理教室を開催した。参加者は、日本語学習をしていている台湾人9名。その他、アシスタントとして国立中興大学(台中市南区)の日本人学生2人が参加した。

 小瓢蟲有機農家は長年有機農業を営んでおり、年間約30~40種類の作物を栽培している。養鶏も営んでおり、農業体験や卵とり体験などのイベントを開催している。2018年、農場内に料理教室などが開ける施設を開設。週末には多くの人が農業レジャーを楽しみに訪れる。オーストラリア人やニュージーランド人の講師などを招き、英語教室や英語を使った料理教室などを開講し国際交流ができる場を提供している。

 小瓢蟲有機農家の巫居訓さんは「農場が山の中にあるため、以前は人と関わる機会が少なかった。もっと農場を開放的にしたいと思い、交流の場として畑の中に料理教室や休憩ができる施設を作った。自分自身が英語や日本語を勉強しているため、農業を通して国際交流ができればと思い、週末などにさまざまな方を招いて交流イベントを開いている」と話す。

 台湾は親日国として知られ、現在日本語を学習している台湾人(18-64歳男女)は175万人~240万人、日本語学習経験者は60.4%に上る。巫さんは、「日本語を使ったイベントは今回が初めて。友人にも日本語学習者が多く、教科書では学べない生の日本語を学びたいという意見が多かった。コロナの影響もあり日本に行くことができないため、以前から面識があった須賀さんを招き、日本語料理教室を開くことになった」と話す。

 台湾では外食産業が活発で、「ほぼ毎日外食をする」という人が25.7%、「週1回以上外食をする」人が79%。特に朝食を外食で済ませる人が多く、「朝ごはん店」が連なっている。そのため、今回「食文化に触れ、日本の朝ごはんを楽しもう」をテーマに開いた。

 まずはスクリーンを使って、日本食の歴史や文化を紹介。台湾人にも分かりやすいよう写真を多く使い、縄文時代から現代までの日本食の移り変わりや発展していく姿を紹介。参加者のほとんどが日本食の歴史について学んだことがなかったため、興味深く聴き入る姿が見られた。

 畑に囲まれているため、外に出ればすぐに収穫体験ができるのが会場の特徴。今回はヤングコーンの収穫体験を行ったほか、巫さんの説明を受けながら白菜や大根、ネギなどの収穫も見学した。

続いて、収穫したての新鮮な野菜を使って調理。メニューは、だし巻き卵、レンコンきんぴら、白菜の塩昆布漬け、チキンのトマト煮、みそ汁。だし巻き卵は最初に卵をひっくり返す練習をしてからのスタート。参加者全員、初めてとは思えないほどきれいに巻いていた。

 調理後に実食。台湾では生で野菜を食べる習慣があまりなく、白菜の塩昆布漬けに驚く人も多かった。レンコンきんぴらも台湾では珍しい食べ方だったという。参加者と学生が言語交換しながら和やかに食事を楽しんだ。

 参加者の一人、徐薇舒さんは「自然に囲まれた環境で、料理教室の雰囲気もとても和やかだったので癒やされた。自分で収穫した新鮮野菜を使用し、直接教えてもらいながら調理できたので、とても貴重な体験だった。日本の家庭料理は、体に優しく、台湾人も好きな味。食文化を通して新たな日本を学べたので、とても楽しかった」とほほ笑む。

 アシスタントとして参加した日本人学生、羽田勇紀さんは「新潟出身で実家が水田地域だったため、小さいころから農業に興味があった。台湾の農業や日本文化を伝えるイベントに携わりたいと思い参加した。今後、もっと若い人に農業の良さを知ってもらったり、子どもたちに食育の場を提供できたりするような活動をしてみたい」と話す。

 同じく荒木円奈さんは「農業や食文化に興味がありアシスタントとして参加した。実際に日本人から日本文化などを直接学べるのはいいと思った。今回のイベントを通して、日本語を学んでいるが日本人と関わる機会が少ないと話す台湾人が多かったため、体験型の日台交流イベントは需要が高まるのではないかと感じた」とも。

 

 農業と聞くと栽培・生産という第一次産業のイメージが強いが、今回のような六次産業(生産者(一次産業者)が加工(二次産業)と流通・販売(三次産業)それぞれの産業を融合することにより、新しい産業を形成しようとする取り組み)を行う農家が年々増えている。

 台湾国内でも農村体験の人気は高まっており、台北世界貿易センターで10月に開催された「台北国際夏秋総合旅展(STF2021)」ではグリーンツーリズムブース「農遊超市」が設けられ多くの人でにぎわいを見せた。「台湾レジャー農業発展協会」(NPO団体)のグリーンツーリズム紹介サイトでは、200ファーム以上が参加し、都市と農村をつなぐ活動をしている。

 2018年の台湾からの訪日者数は前年比約4%増の476万人、日台双方の往来者数は673万人となり、いずれも過去最高を更新した。リピーターも多いため、伝統・現代両面の日本文化や農村体験に対する関心も高まっている。アフターコロナの旅行として、食と農を通した日台交流イベントは需要が高まることが考えられる。

 次回は12月5日、2回目の日本語料理教室の開催を予定している。テーマは「茶道と和菓子」で、農業・料理・茶道体験を予定する。


 

 

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