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インタビュー:日本のスタートアップこそ海外に挑戦するべき。創業手帳CEO、大久保幸世さん

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秋山:創業手帳を始めたきっかけを教えてください。

大久保:大学卒業後、大手企業に勤めたあとにライブドアに転職しました。ちょうどライブドア事件の直前でした。その後GMOメイクショップというネット通販のシステム会社に入り、その会社の取締役をやりました。その業務の中で起業家から起業に関する相談をよく受けていました。その相談内容がある日似ているということに気づいて、このような起業家たちのサポートができればと、2014年に創業手帳を創業したのがきっかけです。

秋山:創業手帳は、起業に関するノウハウを発信しているということですね。

大久保:その通りです。起業の定番ガイドです。紙で月15,000部、飲食版、女性版、資金調達版など、10種類ほど。後はウェブで毎月100万人以上に見られています。日本は経済が伸びてないけれど、お金はたくさんある国なんです。日本の会社の約3割が最高利益、だけど有効的な投資ができていない。何に使えばいいか定まらない。そうした、たまったお金がスタートアップ起業投資に流れ込んでいる傾向があります。ライブドア事件前後の頃、この市場は底だったのですが、現在のスタートアップ投資市場の総額は10倍ほどに増えています。起業する数は変わっていなくても、流れ込んでいるお金(資金調達)が増えている状態です。日本は世界で一番小規模な資金調達がしやすい国かもしれません…金利条件なども含めて。統計では開業に必要な資金も減ってきているので、起業そのもののハードルが下がっています。

秋山:開業資金が減り続けている理由は?

大久保:2つあります。1つ目はネットビジネスのように店舗を必要としないサービスが増えたこと。2つ目は高額なオフィスや設備などを必ずしも買う必要がなくなってきた、クラウドや在宅、シェアリングエコノミーなどの登場。日本は中国などと比べると成長性は目立たないものの、今なお世界第3位の市場規模。ネットの普及で消費者の好みやニーズが多極化していて、起業家にとっては追い風です。後はは、資金調達のしやすい日本で起業して台湾に展開する流れは面白いと思います…日本は人口が減っていますし。

ビジネスは上りのエスカレーター、言うなれば成長市場にどう乗るかが大事です。日本は起業人口の数が少ないこともあって、お金が集まりやすいという残念な現象が起きている。ましてや海外進出を考えている起業家はもっと少ない。なので起業家にとってはチャンスだと思います。中国のような海外進出は当たり前の国に比べると台湾をきっかけにして、もっとグローバルに世界に出ていくべきですね。

秋山:海外進出を支援するような国の助成金や補助金などを活用するのもいいですね。

大久保:そうですね、海外進出系であれば経産省。創業手帳でも補助金ガイドブックというものがあります。ポイントは事業計画が重要です。特に助成額が大きいものであれば、会社の将来を中長期的にどう描くのかイメージしながら情報整理ができて良いです。後は税理士のような専門家と共に事業計画を描いていくこともお勧めです。

秋山:台北経済新聞のフォロワーの中には、恐らく台湾で起業したいという方もいらっしゃるかもしれませんし、そうした方向けのグローバル展開系の助成金などがあるのであれば活用すべきだと思います。そうした情報は創業手帳のサイトでも見れるということですね。さらにその補助金の申請の手伝いもしてるのですか?

大久保:補助金は海外のものは金額も大きいですが、補助金は締め切りや制限も多く、キャッチアップが大変です。そのため、資金・補助金系のニュースを弊社では毎日発信しています。無料の補助金ガイドも大人気です。日本は海外にチャレンジする方がなかなかいない分、国がこうした補助金や融資制度を通じて、海外への展開を支援している面があるので、積極的に制度を活用すると良いと思います。特に金額が大きい助成金を狙う場合、顧問税理士や金融機関と一緒に事業計画を提出することが求められることが多いです。そのため創業手帳では1時間の無料創業相談や、この分野に強い支援会社や税理士などの専門家、金融機関も紹介しています。創業手帳の無料相談のスタッフは全員、1000人以上の起業の相談を受けた経験がある人ばかりなので、一度相談しておくと良いと思います。

秋山:なるほど。何か海外や台湾での経験や思い出があったのでしょうか。

大久保:自分は創業前に海外のさまざまな国に行って、市場調査を行い、実際にその商品を輸入してECで販売していたことがあります。海外の商品の販売で、起業やお金・モノの動き、海外の動向を実際に学ぶのが目的でした。ちょうどその時、台湾が非常に良い「テストマーケティングの実験場」だと感じ、仕事が休みの週末には台湾に行って、台湾の商品を仕入れて日本で販売していたことがあります。

台湾はなぜ良いのかという理由について、1つ目は距離の問題。飛行機で3時間ほどで行ける海外であることです。2つ目は、台湾人は中国語を扱うので、中国語圏でのビジネスを考えた時にメリットがあります。3つ目はやはり、親日的で居心地が良いこと。当然日本と違う面もありますが、歴史的にも文化的にも日本人と近しい部分があるということは大事なことだと思います。

本格的に創業する前に台湾に行って商売をしたのは、視野を広げる意味でも良かったと思います。海外で自分が得意な分野や面白いと思うものを見つけて国内でネットで売る。今は円安ということもあり逆に輸出面でメリットがあると思いますが、どちらにしてもそういう経験を身につけるのは最強の起業準備になると思います。

秋山:なるほど。創業手帳を創業する前に、台湾や海外でいろいろと経験があっての上で、今の支援に至るわけですね。創業手帳の書籍は、どこで手に入れることができますか?

大久保:個々で会社にお送りしていますが、ウェブでは無料で見ることができます。ウェブで登録いただければ個人宅へも無料で配送可能です。

秋山:配送料も無料なんですね。

大久保:創業手帳の書籍には、「資金調達の仕方」「キャッシュフロー改善方法」「販路拡大」「IT」などをテーマに起業に関するさまざまなアドバイスが一つになっています。

秋山:なるほど、そしてウェブの方には起業家との対談インタビューも掲載しているということですね。

大久保:そうですね、情報量が多いのは圧倒的にウェブです。あと、海外の方に使えるものでいうと「創業手帳アプリ」があります。アプリには事業計画書や契約書など自由に使えるひな形が入ってたり、創業手帳主催でセミナーを無料で開いたりしています。資金調達セミナーやホームページを立ち上げるためのセミナーもあります。ただ聞くだけのセミナーだとなかなか身につかないので、自分たちで実践したり、一緒に考えたりするワークショップ型のセミナーも増えました。今後台湾にいらっしゃる方にも参加いただけるとうれしいですね。

秋山:実際に創業手帳をきっかけに創業して成功をした話もありますか?

大久保:たくさんあります。例えば、生花のリサイクルをする会社があり、弊社の1時間無料相談の中で資金調達や販路などをアドバイスさせていただき、起業家の方から喜びの声を頂いたこともありました。後は、弁護士業界でもありました。弁護士業は「いずれ自動化されるのでは」ともいわれてるのですが、弁護士業務を自動化するというリーガルテックなサービスを手がける会社から相談を受けて喜びの声を頂きました。

秋山:ライブドアの経験が糧になっているようなことはありますか?

大久保:あの頃のライブドアは事件直前で「攻め100%」という感じで、守りの部分は弱かった気がします。中から見ると起こるべくして起こったような気がしています。そこで得た経験も踏まえて、守りの部分もしっかり助言していくのが創業手帳の特徴です。スタートアップ系支援メディアでは攻めの支援をするイケイケ状態のスタンスが多い中で、しっかり足元から固めていきましょう、という極めて珍しいスタンスを我々はとっています。起業家は攻めるのが好きなんです、それは起業家の共通点なので、攻めを強化するよりも守りを伸ばすことを大切にしています。失敗率を下げることができれば、成功率が上がるだろうという理論です。

秋山:なるほど。私もスタートアップ系の起業家と話をしたり、ピッチイベントに参加したりする機会もありますが、確かに攻めの要素が強い傾向にありますね。守りを固めながら攻めるというのは、これからの日本のスタートアップにとって必要な考え方かもしれませんね。本日はありがとうございました。


 

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