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インタビュー:日本Jポップシーンを圧倒 台湾のスーザン・ボイル 歌手リン・ユーチュン(林育羣)さん

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 宇多田ヒカル、中島美嘉などをはじめとした日本の国民的Jポップシンガーは国内のみならず、台湾のポップミュージックシーンを席巻してきた。そんな中、2010年代から台湾より単身日本のバラエティー番組に乗り込み、その美声でヒットソングを続々カバーし、鮮烈なデビューを飾った歌手がいる。「台湾のスーザン・ボイル」とも称される、おかっぱ頭がトレードマークのリン・ユーチュン(林育羣)さんに今回、編集長の秋山がインタビューを行った。

秋山:読者の日本人に向けて、リン・ユーチュンさんの自己紹介をお願いします。

リン・ユーチュン:台北経済新聞をご覧の皆さまこんにちは。台北出身の歌手、リン・ユーチュンです。2010年に台湾で放送されたオーディション番組「超級星光大道」に出演した際に披露したホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You(オールウェイズ・ラヴ・ユー)」がユーチューブでバズり、世界で拡散されたことで有名人となり、歌手デビューを果たしました。再生回数は計6億回に達しました。アメリカのトーク番組「The Ellen DeGeneres Show(エレンの部屋)」やオーディション番組「America's Got Talent(アメリカズ・ゴット・タレント)」、メジャーリーグの始球式などでパフォーマンスを披露し、海外メディアでも報じられました。

秋山:リン・ユーチュンさんというと2012年に放送された日本のバラエティー番組「関ジャニの仕分け∞」の採点カラオケで、ホイットニー・ヒューストン、宇多田ヒカル、MISIAの曲を大変美しい声で披露し、スタジオ中を感動させ、対決している当の女性タレントが涙を流すようなことがありました。その番組がきっかけで、リン・ユーチュンさんのことを知ったという日本人もいらっしゃると思います。番組に呼ばれた経緯を教えてください。

リン・ユーチュン:アメリカの番組に出演以降、ソニーミュージックと契約しファーストアルバム「It's My Time」をリリースしたのですが、その後の縁で日本のバラエティー番組「奇跡ゲッター ブットバース!!」に出演したことがありました。その番組を「関ジャニの仕分け∞」のプロデューサーが見ていたことで声がかかり、番組出演が実現しました。2回目の出演時には視聴率16.2%と番組史上の最高記録をたたき出し、その夜のヤフー検索でランキング首位に輝きました。それからユニバーサルミュージックと契約につながりました。

秋山:最近は台湾でどのような活動をしていますか?

リン・ユーチュン:直近では、台南を拠点に活動されている歌手、山元サトシさんとコラボしています。9月17日に台南市で開かれる山元さんのコンサートでゲスト出演が決まりました。私自身が日本との縁が深いものですから、台湾で活躍する日本人歌手である彼を応援したくなりました。それ以前ですと、2020年にデビュー10周年記念ライブを開催したほか、コロナ前から音楽のプロデュース活動にも取り組んでいます。

山元サトシさんとコラボ中

リン・ユーチュン:ほかには、企業とコラボし日本風のインスタントラーメンの開発に協力したり、イメージキャラクターを務めたりしています。日本の楽天市場や台湾の誠品生活などで販売しています。

秋山:台湾ではコロナ前、沖縄のオリオンビアフェストを毎年開催しており、ミュージシャンや歌手を招待してライブパフォーマンスをしていました。コロナ禍も落ち着き、今後イベント再開が期待される中、日台で活躍するリン・ユーチュンさんはイメージに合致すると思います。

リン・ユーチュン:縁がありましたら、ぜひ出演したいです。日本とのいろいろな交流を楽しみにしています。

秋山:今日本ではさまざまな歌番組がある中、お笑い芸人の千鳥が司会を務める「鬼レンチャン」という採点カラオケ番組が日曜ゴールデンタイムで大変人気です。個人的にリン・ユーチュンさんにはぜひ挑戦していただきたいと思っているのですが、いかがでしょうか?

リン・ユーチュン:この番組はネットで知りました。バラエティー番組でありながら、ここまで歌にフィーチャーしているのは珍しいですよね。難易度が高く、非常にプレッシャーのある企画ですが、私はチャレンジャーなので、機会があればぜひ挑戦したいです。「関ジャニの仕分け∞」に出演していた当時も、私は日本語もままならない状態でしたが、Jポップが大好きだったので挑戦を決意しました。

秋山:台湾では今どのような音楽がはやっているのでしょうか? 音楽業界で活躍されているリン・ユーチュンさんの視点を日本人読者に教えてもらえますか。

リン・ユーチュン:台湾では近年ラップ、R&Bが流行しています。男女に限らずアイドルグループも増えています。オーディション番組「原子少年(アトムボーイズ)」から結成されたボーイズアイドルグループなどが例です。Kポップからの影響だと認識しています。

秋山:個人的に台湾にはラブソングのバラードが多い気がします。

リン・ユーチュン:とても多いです。中華圏ではバラードが好まれ、私がデビューした当時もそうでした。バラードはカラオケで歌いやすく、ヒットしやすいので、レコード会社も好んで作っています。例えば一青窈さんの「ハナミズキ」のような楽曲ですね。

秋山:リン・ユーチュンさんが注目しているアーティストを教えてください。

リン・ユーチュン:個人的にはプライベートで交友もあるシーシー・スン(孫盛希)さんとダイアナ・ワン(王詩安)さんです。シーシー・スンさんは韓国華僑、ダイアナ・ワンさんはオランダ華僑で、それぞれの音楽には他国の要素が融合し、インターナショナルなスタイルです。シーシー・スンさんの楽曲「Remembered(眼涙記得イ尓)」は音楽配信サービスのKKboxのシングルランキングで首位に輝いたことがあります。ダイアナ・ワンさんの楽曲「HOME」はYoutube再生数が3000万回を超えました。

秋山:コロナ禍も明けて台湾に来る日本のアーティストも今後増えてくると思いますが、リン・ユーチュンさんが注目する日本のアーティストはいますか?

リン・ユーチュン:Official髭男dismですね。日本の友人から「Subtitle」という楽曲を薦められ、カバーしてほしいという声もありました。ただ、この楽曲の難易度は非常に高いです。YOASOBIにも注目しています。Netflixでも配信されているアニメ「推しの子」のオープニング「アイドル」が好きです。最近見たアニメの中で一番のお気に入りで、毎回見る度にメロディーを口ずさんでいます。

リン・ユーチュン:日本の歌手のMay J.さんとは番組で仲良くなって以降、コロナの期間や今も交流が続いています。ユニバーサルミュージックの先輩であるシェネルさんとも交友があり、曲をカバーしたこともあります。以前シェネルさんのライブにゲスト出演し「Believe」を披露する予定があったのですが、台風の影響であいにく中止となり、今も残念です。

リン・ユーチュン:話は変わりますが、台湾のテレビでは日本番組を報じているチャンネルが多くないため、YoutubeやNetflix、音楽などから日本文化の情報を収集しています。テレビ番組「ビックリ台湾!(台湾好吃驚!)」のMCを務める松野高志さんや、俳優・モデルで日台文化の違いにフォーカスしたリールで人気の一樹さんのファンです。

秋山:リン・ユーチュンさんは今後、日本に仕事で行く予定はありますか?

リン・ユーチュン:7月に大阪で、8月に鹿児島でコンサートがあります。鹿児島へ行くのは初めてで楽しみにしています。コロナ禍も落ち着き、日本関連の仕事が増えていますので、所属事務所やイベントなどを通じて、日本の芸能界での活動を積極化したいと考えています。

秋山:リン・ユーチュンさんが今後、来日する機会が増えることを願っています。日本へ行くに当たって、好きなグルメなどを教えてください。

リン・ユーチュン:たくさんあります。日本食であれば焼き肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、おにぎり、刺し身などです。特に和牛焼き肉は他国と比べ物にならないほど肉質が良く、忘れられません。他にも日本の外国料理、インドカレーやフレンチなども大好きです。日本にはインド系の移民が多く店を開いており、台湾よりもリーズナブルな価格で本格的な料理が味わえるからです。台湾でフレンチを食べようとすると非常に高いですが、日本ではおいしいのに手頃な店もあります。

秋山:プライベートで日本旅行に行くなら、どこへ行きたいですか?

リン・ユーチュン:東北地方や北海道へ行く機会が少なかったため、ぜひ旅行へ行きたいです。暑がりなので涼しいところが好ましいです。昔北海道へ旅行に行った時の空の青さ、雪まつりの風景が思い出に残っています。友人に連れて行ってもらった、全て氷でできているバーが大変面白く、氷のグラスで飲んだ梅酒やウイスキーは格別でした。台湾のような亜熱帯地域にはない夢の世界でした。ほかには、まだ日本で行ったことがない四国へ旅行したいです。台湾では四国にまつわる情報が他の地域と比べて、とても少ないと思います。

リン・ユーチュン:個人的に日本で気に入っている観光地は東京の渋谷センター街、明治神宮、京都の鴨川、夜桜などです。温泉も好きです。台湾では水着が必要なため、日本の温泉は最初戸惑いましたが、何も着ない開放感がやみつきになりました。

リン・ユーチュン:日本でのエピソードなのですが、以前主演を務めた短編映画「どす恋 ミュージカル」の撮影のため日本に3週間ほど滞在していたことがありました。朝は相撲の稽古、午後に撮影、夜に台本の暗記と非常に忙しい日々でした。主演のため。せりふが多く大変だったのですが、めったにない機会だったため、スタッフにせりふを録音してもらい、発音を一生懸命覚えました。そんな中、本物の力士の横に並んでみると「痩せているな」と言われたことがあり、非常にうれしかった思い出があります。人を見た目で判断する人もいる世の中で、国技である相撲が日本国民に親しまれているように、私のぽっちゃり体形もただ一つの個性として人々に受け入れられたのだと感じました。映画のスタッフらに連れていってもらったちゃんこ鍋店は絶品で、素晴らしい体験でした。

どす恋 ミュージカルの撮影シーン

■リン・ユーチュンさんがゲスト出演するライブ情報
【2023年山元サトシ ソロコンサート −人気日本ドラマ テーマソングの旅−】
日時|2023/09/17(日) 15:00入場開始
場所|台南文創園区1楼「漂丿白鷺Live House」/台南市東区北門路二段16号
チケット情報|https://satoshi.kktix.cc/events/2023live

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