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台湾クラファン最大シェア「嘖嘖zeczec」CEOと日本企業の可能性について語る

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 2021年度に90億台湾ドル(約378億円)を超えた台湾のクラウドファンディング市場。その台湾のクラウドファンディング業界で最もシェアを持つクラウドファンディングサイト「嘖嘖zeczec」の徐震CEOに編集長の秋山が話を聞いた。

秋山 zeczecについてお聞かせください。
徐震 zeczecはクラウドファンディングのサービスです。自分の思うクラウドファンディングの形があって、創立しました。ロンドンに10年住んでいましたが、海外という環境もあり、日々の生活にさまざまな面白い出来事がありました。ロンドンのクリエーターたちが、自分自身でアイデアを生み、店を開いて、展覧会を開いていました。その時に、クラウドファンディングというサービスが適しているのでは、と思いました。そして台湾でもこのようなクラウドファンディングのサービスを創設しようと思いました。

秋山 zeczec自体は何年めですか?
徐震 2012年に創立して10年です。

秋山 うちも先月で10年でした。海外で10年というのは具体的に何をしていたのですか?
徐震 1年目はマスターディグリー(修士)の勉強、その後、建築士。ロンドンで5年働いた後に、自分で創業しました。
秋山 ロンドンで5年仕事していたのは建築の仕事ですか?
徐震 そうです。不動産デベロッパーの会社で働いてました。
秋山 その中でさまざまなアーティストと出会って、zeczecを立ち上げるきっかけになったんですね。
徐震 そうです。当時独立したデザイナーたちがクラウドファンディングで資金を集めて夢をかなえていました。そうした友達の影響もあり、zeczecの案件の半分くらいは身近の友達の案件でスタートしました。
秋山 ロンドンにいる時に建築の仕事をしながらクラウドファンディングのサービスを始めたのですか?
徐震 そうです。創立メンバーはロンドンで知り合った台湾人です。
秋山 建築業界に身を置きながらzeczecの事業を開始したのですね。建築とクラウドファンディングは業界的に違う感じがしますが、なかなか簡単なことではないと思いますが、何かきっかけがあったのでしょうか? スケールしていったきっかけはありますか?

徐震 それについてはロングストーリーになりますが、簡単に伝えます。僕は建築士なので、まさか自分がこのような形で創業するとは思ってもいなかった。自分がこのクラウドファンディングという特別な業態と出合えたのはラッキーだと思います。僕の性格にも合っていました。なので、建築士から経営にスムーズに転身することができました。
僕の性格は、子どもの頃から興味の範囲は広いけど、どれも集中して極めるところまでいかないのです。新たな興味が生まれると、熱中してすぐに上達しますが、70%くらいまで上達すると、やめちゃうタイプ。建築の仕事も70%までしか極められませんでしたが、その時、この私の性格が「他の人を手助けする」のに向いていると思ったのです。才能のある創作者たちでも100%自分で全部できない人もいます。その人のできない部分をサポートすることで100%の成果を出すのが自分の性格に合っていると気づきました。

秋山 台湾のクラウドファンディング市場は盛り上がってますか?
徐震 台湾人は人助けを進んでする傾向があります。寺などにお金を寄付する人も多く、支援を望んでする人が多い社会です。台湾はここ数年、新しく斬新なクリエーションを生んでいて、新鋭クリエーターや若者たちも積極的に創作活動をしています。このような2つの理由から、台湾は他の国に比べてクラウドファンディング市場の盛り上がりにつながっています。

秋山 台湾の市場規模的には金額はどんどん増えている感じですか? 日本はいったん落ち着いてきたように感じますが、台湾はまだまだこれから伸びるような気がしています。
徐震 日本のクラウドファンディングは台湾より1~2年先を行ってるように感じます。なので、台湾も1~2年遅れて盛り上がりを見せたのでしょう。ここ2年はコロナの影響もあり、Eコマースのニーズが急激に増えたことも追い風になりました。

秋山 zeczecで日本の商品は人気ですか? どういう商品が人気になる傾向がありますか?
徐震 台湾人にとって日本文化に関わるデザインが市場消費者の注目ポイントだと思います。日本人の生活は「緻密(ちみつ)で手の込んだ凝ったもの。繊細さ」だと思います。生活の緻密化から生まれる面白い商品が注目されます。細かな所に手が届くというか、そんな手の込んだクリエーティブなものが人気です。もう一つは日本のサブカル。台湾の若者にとって、日本はサブカルのイメージが強いです。

秋山 サブカルに関してどのような事例がありますか?
徐震 よく目にするのは、日用品のバッグやスーツケースなど、その機能性の高さ加えて、日本ならではのキャラクターを合わせたものです。以前はハローキティのコラボバッグを取り扱いましたが、機能面に加えてキティ自身の人気もあって大変注目を浴びました。

秋山 個人的に何か日本のサブカルで好きなものはありますか?
徐震 ハイキュー(アニメ)が好きです。

秋山 トナリエは日本の商品を台湾市場に展開します。しかし「日本から台湾」という流れだけでなく、「台湾から日本へ」という双方向のムーブメントが起きる可能性を期待していますが。いかがでしょうか? 例えばペットのドライルーム(シャワー後に入ることで根本から乾かすペット用ドライヤールーム)、台湾zeczecで大人気になった後、日本のmakuakeでプロジェクトが始まって大きな金額が集まってますね。
徐震 個人的に、このブランドの次のステップは国際貿易だと思っています。生活習慣によって、その国でのニーズは変わってきます。日本や韓国などは生活習慣も近いので、これまでの経験も生かしてニーズの解像度を高めます。ロンドンに10年住んでいましたが、欧米人とアジア人の生活習慣は大きく違います。なのでアメリカにものを売ろうとしたら、大きく方向性を誤ってしまう可能性もあります。日本や韓国など生活習慣を理解しやすいところから進出したいですね。

秋山 弊社の名前はカケハシ、日台の行き来が生まれたらいいなと思ってます。
徐震 私も楽しみです。
秋山 私は台湾に10年住んでますが、今回の「Tonarie-トナリエ」との連携のように、日本には技術の高い中小企業が埋もれています。彼らの繊細な技術や地方の伝統工芸品などのような特殊な技術がうまくzeczecを活用することで海外向けの商品開発やテストマーケティングが低コストで可能になると思うのですが、どう思いますか?

例えば、日本の東大阪は昔から刃物作りが盛んで、素晴らしい品質の包丁などがある。それは日本人の間ではそれなりに知られていますが、うまく海外展開できてない。このような課題が日本全国各地で起きています。

徐震 日本商品の台湾市場でのチャンスは大いにあると思います。台湾人にとって日本のテレビ番組や雑誌などの情報を目にする機会も多いので、日本文化への理解度が高いです。そして、クラウドファンディングの特性は小さなブランドでもストーリーがあること、そしてそれを見てもらえること。知名度の高い大手ブランドはデパートで売られ、キャラクターの知名度に任せて販売されているものもある。それに対してクラウドファンディングは3~4分で読める簡単な内容でブランドの特徴を描き、消費者に訴求できる。知名度に頼ってないので、すごく向いてると思います。

秋山 ビジネスの話をします。台湾だけでなく、中華圏にうまくスケールできれば大きなビジネスが生まれると思っています。
徐震 言語は同じだけど、マーケティングや販売方法は中華圏と台湾では違う部分もあります。日本語から中国語にするにしても、大陸、香港、マレーシアそれぞれ現地のマーケティング用語がある。台湾は中間ステップとしていい場所だが、現地にローカライズしないと一筋縄ではいかない。
秋山 もちろんそうですね。zeczecの未来の展望をお聞かせください。
徐震 「ゼロ(0)から1を作る」という考え方をお持ちの人は多いと思いますが、弊社は今、0.5のものを1にする支援を行っている。それで商品の品質も高く、弊社の状況も安定しているが、今後は0から0.5をクリエーションすることを支援したい。それは資金や支援があればできるので。
秋山 なるほどですね。最後に日本人読者に台湾市場を狙うメリットや魅力を教えていただければ。
徐震 台湾マーケットの魅力は、支援者とクリエーターがインタラクティブ(双方向)であること。消費者が商品のいいところ、悪いところ…何でもメーカーに伝える文化があります。これは未来の商品作りにとって大いに手助けとなります。コミュニケーションがあって、次の世代の商品開発に寄与する。
秋山 日本ではクラウドファンディングで成功して、お金を集めて販売して、それで終わってしまうメーカーが多いと聞きます。せっかく商品が話題化したのに次の展開が見えないという課題です。次のステージにつなげるためには何が一番大事だと思いますか?

徐震 zeczecでの商品は、企画終了の後、約50%の商品が世に出回る。ただ、その後の展開で商品を量産する際に品質に問題が出て、問題になったりする。そこで、(1)量産時の品質のコントロール、(2)先走りしすぎないこと。これが大切です。先進的なアイデアを持っていても、「先走りしすぎないこと。」
ARやVRのように、実現するハードはあるけど消費者がそれに追いついていなかったり、そのまた逆もあったりします。ハードとソフトの問題。需要と供給。この2つがポイントです。

秋山 ありがとうございました。

台湾のクラファン展開を支援する日本人専門サービス「Tonarie - トナリエ」

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